• (attc vs Koharu)縁かいな ~Bring Us Together~

    完全に買いそびれていたためけっこう探していたものです。ようやく購入できました。民謡、端唄をゆるやかなバンドサウンドに載せた内容で、どう説明していいかわからないんですがめちゃくちゃかっこいい。本作にはCDと7インチがついており、後者のみに収録…

  • (Beijing Silvermine project)双喜【Until Death Do US Part】

    『Until Death Do Us Part』は中国での結婚式で行われているタバコ文化についての作品です。今となってはあまり行われていないようですが、特に80年代の北京を中心とした中国北部では、感謝の気持ちとして、花嫁は式に参列した男性た…

  • (Natch)波の花

    とても良かった……。浴衣の二人のやりとりがめちゃくちゃ良くて、徳光2-4を一瞬思い出しながらそれでも踏み込んだ海瑠と吉田さんのやりとりにグッときた直後、ラジオブースの回想が入る瞬間にあの頃二人だけの時間やそれからの時間経過のこと考えてちょっ…

  • (Padograph)Padograph雑誌 第1号 特集:周縁から内在へ アジア現代美術

    『Padograph雑誌 第1号 特集:周縁から内在へ アジア現代美術』を読み終えた。とても良かった……。韓国、中国、ベトナム、日本の現代美術に関する論考や寄稿者たちによる座談会、さらに台湾に関する論考と、韓国の翻訳美術批評が収録されていま…

  • (panapanya)そぞろ各地探訪

    『そぞろ各地探訪』(panapanya)を読んだ。旅の記録が集まっているので情報量がギュッとしていてこういうときにちょうどよいくらいのペースでゆっくり読めてよいです。少し読んだり寝たりしてた。「DustScript」には今回の収録に合わせて…

  • (Theピーズ)別冊たまロカ30 思い出すのが面倒だ Theピーズの30年

    ずいぶん前に買っていたけど分厚さに手を出せずにいたものです。いや、もう少しちゃんと理由を書いておくと、Theピーズのことは昔からめちゃくちゃ好きだけどその歴史や他の人からの思い出話とかにはあまり関心がなかったところがあって、ありました。それ…

  • (unk distro)冊子2021

    ネット上でのディストロ活動、取り扱う品目、入荷数、レビュー、サブスクについて等々、個人でのディストロ運営のなかでのあれこれを日記のような形にまとめた冊子です。「こうである」「こうあるべき」みたいなものではなくて、「実際にやっているなかでわた…

  • (アンドレイ タルコフスキー (著), 鴻 英良 (翻訳), 佐々 洋子 (翻訳) )タルコフスキー日記―殉教録

    先日、特集上映やリマスターのあったタルコフスキーの1970年から1986年までの日記です。少し前の日記に感想を書いた気がするんですが、とにかく映画から勝手に想像していた監督像とはぜんぜん違う、生身の書付が並んでいて迫力がある。というか、何な…

  • (ヴァンサン・ゾンカ (原著), 大村嘉人 (解説), エマヌエーレ・コッチャ (解説), 宮林寛 (翻訳) )地衣類、ミニマルな抵抗

    冒頭に筆者が書いている通り、エッセイ調で各時代の詩を中心に文化作品を集めてきて、時代ごとの地衣類の取り扱いやそのイメージをならべていくような本です。なので読み方も整理して地衣類の知識を頭に入れるんじゃなくて、もっとその地衣類を研究していた人…

  • (ゲルハルト・ツァハリアス (著), 渡辺 鴻 (翻訳) )バレエ 形式と象徴

    冒頭、まだ本題に入る前の話題としてアン・ドゥオール(脚を外側へ開くこと)の話題が出てきます。アン・ドゥオールは、まず実際上の必要から生まれたものであるが、また解剖学的な意味をもっている。A・J・ワガーノヴァを引用してみよう。「これ(アン・ド…

  • (シモーヌ・ヴェイユ (著), 今村純子 (翻訳))神を待ちのぞむ

    今までアンソロジー等は触れていたものの『神を待ちのぞむ』は今回の新訳がはじめてです。正直にいって読むたびに頭の上をすべっていく感覚がある読書でめちゃくちゃ時間がかかってしまった。シモーヌ・ヴェイユ、最初に触れたのが伝記だったからか、どうして…

  • (トーマス・S・マラニー (著), 比護 遥 (翻訳))チャイニーズ・タイプライター 漢字と技術の近代史

    「近代」の象徴としてのタイプライターおよび中国語タイプライターの不可能性を軸に、中国語あるいは漢字に対する姿勢、タイプライターの構造、あるいはキー配置、打字の習熟過程、日中関係等々……からその成り立ちを明らかにしていく内容です。序論のツカミ…

  • (トマス ピンチョン (著), 志村 正雄 (訳))スロー・ラーナー

    『スロー・ラーナー』(トマス ピンチョン (著), 志村 正雄 (訳))を読む。「低地」「エントロピー」はアンソロジーにぽんと入ってたらかなりうれしいタイプの短編です。他にはいま読みかけている収録作最後の「秘密のインテグレーション」もとても…

  • (ネビル・シュート (著), 井上 勇 (翻訳))渚にて

    『渚にて』(ネビル・シュート (著), 井上 勇 (翻訳))を読み終わる。核戦争後、北半球から少しずつ地球全体に放射能が拡がり迫るなか、南半球のメルボルンで過ごす人たちを描いたSF。天国大魔境にも登場してマルくんが読んでいたものです。わたし…

  • (ハンス・ヨーナス (著), 品川 哲彦 (翻訳))アウシュヴィッツ以後の神〈新装版〉

    巻末の解題が丁寧なのでそこから引いてくると、一章は”アウシュヴィッツという経験に整合的な神概念の探求”、二章は”過去についての認識を可能にし、かつまた私たちの歴史的な実存を有意味にする超越論的制約としての神”(”これは神の存在証明ではなく、…

  • (ムージル (著), 古井 由吉 (翻訳))愛の完成/静かなヴェロニカの誘惑

    『愛の完成/静かなヴェロニカの誘惑』(ムージル (著), 古井 由吉 (翻訳))を読んでいます。先日までに読んでいた、ワイマール文化に関する本にも著者が登場していました。第一次世界大戦前後の作家です。冒頭の夫婦の会話の場面がめちゃくちゃ良い…

  • (メノ・スヒルトハウゼン (著), 岸 由二 (翻訳), 小宮 繁 (翻訳) )都市で進化する生物たち

    『都市で進化する生物たち』 を読み終わった。都市生態学の本で、冒頭からおもしろい事例の紹介が続きます。20世紀後半にロンドンの地下鉄路線ごとに別の遺伝情報を持つことがわかった蚊、都市の煤汚れとその環境対策による浄化によって体色を変えてきた蛾…

  • (ローベルト・ムジール (著), 森田 弘 (翻訳))ぼくの遺稿集

    古井由吉がもともとドイツ文学をやっていてローベルト・ムジールを訳していたことを覚えていて買ったんですが、収録作の「つぐみ」はけっこう同じ雰囲気を感じるところもあった。男が報告する半生、日常の中にふとしたときに感じる神秘、過去の体験の一つがフ…

  • (不詳)創作1973年10月-1975年7月

    50年前に書かれた作者不明の日記です。読んでいて何となくわかる事実を並べると愛知県三河地方に在住、3兄弟の長男、職を転々としつつ最近1年くらい現場で職人をやってる、本をよく買う、たまに旅行に行く、麻雀・花札・パチンコを毎日やりよく負ける、そ…

  • (佐藤恵子)ヘッケルと進化の夢 ――一元論、エコロジー、系統樹

    きっかけは以前読んでいたヘッケルの『生物の驚異的な形』で、これは「市川春子の本棚」に記載されていたものなんですが、放散虫などを二次元的に整理配置したこの図版集のイメージは強烈で、すごく味があるというか頭に残るタイプの本だったんですよね。それ…

  • (佐藤泰志)きみの鳥はうたえる

    収録の「草の響き」を読む。この作品を映画化したものを昨年みてめちゃくちゃくらったんですが(BDも買った)、原作をこれまで読んでいませんでした。具合のよくない今ではありますが、逆に今読まないといつ読むんだ?という感じもあり手に取りました。心を…

  • (内田百閒)ノラや

    最序盤にノラ(飼い猫)がいなくなってからの日々をまとめたエッセイです。わたしは猫がどちらかといえば好きなんですけど、この好きは写真がかわいい!あるいは猫をモチーフにしたキャラがかわいい!って感覚で、例えばタイムラインに猫の写真が流れてきても…

  • (加藤晴久)ブルデュー 闘う知識人

    文化資本って単語だけはこれまでに何度も目にしていて、そしてなんとなく避けてたところもあったんですけど、先日のNHK100分で名著シリーズに入ってたのをきっかけにこの本も積んでいたのを思い出してテキストに続けて読んでいました。すごく読みやすい…

  • (千種 創一)砂丘律

    歌集を読むのはいつぶりだろう。これまで集中して触れる機会がなくて、読み方のリズムと言うか、ひとつの歌にどれだけの時間ふれるべきかの感覚が、今でも自分の中で定まらない。前に詩は朗読すると良いよって聞いてお風呂場で黄金詩篇を読んだことがある。そ…

  • (千葉 成夫)増補 現代美術逸脱史 ――1945-1985

    最初にこの本のことを知ったのは、前にも日記に書いた宮川淳について、本人の著作はいくつか読んでいるんですが他の人が宮川淳について書いたものをほとんど読めていない(見当たらない)ことが気になって探してたときだった気がします。それで手にとって本作…

  • (古井 由吉)こんな日もある 競馬徒然草

    いま読んでるいる本です。1986年~2019年にかけて優駿に掲載された古井由吉の記事をまとめたもので、完全にウマ娘もろかぶり世代のエピソードが読めます。いまはアイネスフウジンのダービーあたり。ウマ娘アプリで2,000や3,200メートルのレ…

  • (古井由吉 (編))馬の文化叢書9巻 -馬と近代文学-

    全10巻で国内で近代以降に書かれた文献が古代、中世、近世、近代の時代区分ごとに第1~5巻、民俗学第6巻、(畜産学や獣医学をまとめた)馬学第7巻、馬術第8巻、文学第9巻、競馬第10巻にそれぞれまとめられています。そのうちの文学編は農村だけでな…

  • (古井由吉 他)小説家の帰還 古井由吉対談集

    対談集ということもあって気軽に手に取ったけどこれまでに読んだ諸々の文章で触れられていた内容が改めて相手に対応する形でいくつも語られていて、とてもよかったな。「私」という人称に含まれてくる死者について、あるいは現在を完全過去でとらえることにつ…

  • (古井由吉)仮往生伝試文

    『仮往生伝試文』(古井由吉)を読み終わった。一月かかりました。450頁のどこを切り出すような作品でもなくて、時間をかけて読むとなんとも手応えがというか、読んだそばから感覚だけ残って話が抜けていくような読書感がある。言ってしまえば古井由吉作品…

  • (古井由吉)半日寂寞

    日経新聞等に載せていた短い文章を集めたものです。そうやって読むとかなり時勢に沿った内容が多かったんですが、終盤に入っていた「いよいよ淡く」がとても良かった。音楽にもならない音楽を、静けさの中にわたるけはいを、という話。

  • (古井由吉)女たちの家

    『女たちの家』(古井由吉)を読み終わりました。『櫛の火』につづいて手元にあった古井由吉の長編として読みました。面白かったです。両親と兄二人に妹の家族。両親と姉妹に弟の家族。それぞれの妹と弟を主軸に描かれる人間関係が『女たちの家』というタイト…

  • (古井由吉)山に行く心

    古井由吉の『山に行く心』を読む。エッセイ集となっていますが、それにしても他であまり読んでこなかったような短文が集められていて新鮮なものがある。「さて、煙草はどこだ」がよかった。暗闇で吸う煙草の火の色について、水たばこを吸った経験、それにいつ…

  • (古井由吉)改訂新版 楽天の日々

    『改訂新版 楽天の日々』(古井由吉)を読み終わった。00年代から10年代頃の文章を集めたものです。既読のものもいくつかあるんですが、似たような話題も多いので自分の記憶が正確かはわからない。日記や同時期の文章が並んでいることもあり、この話題が…

  • (古井由吉)新鋭作家叢書 古井由吉集

    収録作のうち、デビュー作の「木曜日に」と「円陣を組む女たち」「不眠の祭り」は初読です。日常の一部を徹底的に描くことと、同じように内面を徹底的に描くことがひとつの文章の中で重なる凄みが、これは他の作品にも通じる読みにくさでもあるんですが、これ…

  • (古井由吉)木犀の日

    『木犀の日』を読み始めて、いま「夜はいま」を読んだところです。20頁ほどの短編で、半分くらいまで何がなんやら全然飲み込めなかった。(怖いものが苦手なのでホラー映画を本当に中学の行事以来一切みておらず、かなりイメージで書いて申し訳ないですが……

  • (古井由吉)東京物語考

    『東京物語考』(古井由吉)を読み始めました。タイトルから映画『東京物語』に関しての本なのかな~と漠然と思っていたんですが、そして実際に書き出しはそれなんですが、内容としては明治・大正・昭和の私小説、徳田秋声、葛西善蔵、嘉村磯多などの著作の内…

  • (古井由吉)椋鳥

    いまは『椋鳥』を読んでいます。ここまで読んだ中だと収録作のうち「咳花」がよかった。「雪の下の蟹」と同じく金沢を舞台した、おそらく赴任時代を題材にした作品です。金沢作品って雪の下の蟹(良い)以外にもあったんだって思いながら読んでいたんですがこ…

  • (古井由吉)楽天記

    『楽天記』(古井由吉)を読みはじめて、今1/4ほどです。冒頭の5頁がすごい。家に戻ると息子が帰っていた。日の傾き始めたなか、部屋でこちらを振り返る息子からの「小春日和だねえ」という投げかけに対して簡単なやりとりをしながら、その息子はどうも穏…

  • (古井由吉)槿

    今は『槿』(古井由吉)を読んでいます。まだ冒頭ですが、古井由吉の触れる離人感についての部分はどうしても前のめりに読んでしまう。好きなので。それはそれとして、作中に「木槿と、朝顔とは、同類だろうか」「木槿とは木です。朝顔は、草です」     …

  • (古井由吉)櫛の火

    『櫛の火』(古井由吉)を読み進める。そういえば古井由吉の長編作品は初めてかもしれない。いや、短編連作も似たようなものといえばそうなんですが。とにかく陰鬱な、粘っこい男女関係とその周辺を描いているので少し気分にもそういう影響をしている気がして…

  • (古井由吉)水

    『杳子・妻隠』の次に読んだ初期(?)の短編集になります。冒頭収録の「影」が芥川賞受賞第一作。 古井由吉本人が”人の評価は別のものとして、著者自身が後々まで懐かしむ作品があり、わたしにとってこの短編集はその一つである。”としているような作品な…

  • (古井由吉)漱石の漢詩を読む

    2008年の岩波市民セミナーをもとにつくられた本。以前読んでいた古井由吉の文章に漱石の漢詩の話題が出てきたことがあって、それはこのあたりを元に書いた文章だったのか逆だったのか、時期は不明ですが、確かそこにも本作で触れられている修善寺の大患に…

  • (古井由吉)眉雨

    『眉雨』を少しだけ読んだ。表題作は先日の自選集以来に改めて読んでも全然頭に入ってこないね……。それでも収録されているいくつかの他の短編(「斧の子」「叫女」)を読みすすめてるといずれも精神の不調と世界とのバランスの話が続いていて、そのうえでこ…

  • (古井由吉)詩への小路 ドゥイノの悲歌

    1~15章は詩の翻訳を挟んだ随想、16~25章はリルケ「ドゥイノの悲歌」の改行なしの試訳になっています。あとがきでのなかで、この前半の随想部分は、過去作である「山躁賦」の時にだけ感じたものと同様の楽な筆の運びになっていたことが触れられていま…

  • (古井由吉)辻

    『辻』(古井由吉)を読み終わりました。いや、全然読めない……。「辻」から「始まり」までの短編12篇収録でそのいずれも辻が登場するんですが、この一番大切な辻がつかめないまま最後まで終わってしまった。暮れかけたその榎の朽木を後にして、やや広い児…

  • (古井由吉)連れ連れに文学を語る 古井由吉対談集成

    古井由吉の対談はこれまでにいくつか読んでいるんですが、本作は頭からお尻までとてもよかった、と思います。わたしは古井由吉の小説、あるいはエッセイを読むにあたってさえも(本作を含めた)過去の対談たちがかなり補助線になるというか、折に触れてこうい…

  • (古井由吉)雪の下の蟹/男たちの円居

    古井由吉の『雪の下の蟹/男たちの円居』を読み始める。短編集で、表題の雪の下の蟹はアンソロジーか何かで読んだと思っていたんですが、読み進めるうちに初読っぽいことに気づいて記憶力のあてにならなさにたははってなったね。1963年1月の北陸大豪雪を…

  • (古川日出男 訳)平家物語

    長かった、これは読みにくいという話ではなく、単純にわたしのメンタルがずっと読書に向いていなかったことがあります。いや、序盤はまあまあ読みにくというかだるいところもありますが……。解題を読んでいると、平家物語は壇浦合戦から50年後頃に成立した…

  • (吉村昭)鯨の絵巻

    『鯨の絵巻』(吉村昭)収録の「鯨の絵巻」を読む。数ヶ月前に鯨関連の本、特にノルウェー式に移行したあとの漁に関するものを読んでいたんですが、これは伝統的な網とり漁法の刃刺の生涯を描いたもの。著者の作品は『羆嵐』しか読んだことがなかったんですが…

  • (吉田喜重 (著), 小林康夫 (著), 西澤栄美子 (著))宮川淳とともに

    わたしの持っている宮川淳へのイメージ、もちろん著作から受け取るイメージだけですが、この本を読んでいるとそこに吉田喜重の語る大学時代の2人の思い出が重なってくる気持ちになります。というよりもこの大学時代の二人の付き合いとその後の分岐があまりに…

  • (吉野源三郎)君たちはどう生きるか

    今夜のレイトショーで映画『君たちはどう生きるか』をみる予定なので、本棚に刺さっていた未読の『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)を持ってきました。もうずっと棚にあるのは知っていて、というかずっとあるからなんならこの本の隣が『トゥバ紀行』だっ…

  • (名古屋市博物館)真福寺文庫展図録

    真福寺、通りのいい名前だと大須観音の蔵書です。真福寺のみに残る伝本として重要文化財の『口遊』があるんですが、この本にはそれが載っていて、それが目当てでした。これが今読んでいる『いろはうた』(小松英雄)で紹介されているんですよね。特に、伊呂波…

  • (嘉村磯多)業苦/崖の下

    収録作だと「秋立つまで」「途上」が良かった。いや、表題の「業苦」「崖の下」もすごいんですが、あまりに自意識のねじれ、自己嫌悪やそれに基づく人間関係の拗れが直接的というか暴力的で……というところがあって、あります。自分が嫌悪するものと一方でそ…

  • (堀江 宗正)ポップ・スピリチュアリティ: メディア化された宗教性

    2000年代以降の”スピリチュアル”、江原啓之、占い、パワースポット、神社ブーム等々それぞれがどのように展開したのかを追っていく内容です。特にパワースポット、神社ブームの章では実践者や当事者がどのような体験、内面を持っているのか、それをどの…

  • (宇田亮一)新装版 吉本隆明『共同幻想論』の読み方

    『新装版 吉本隆明『共同幻想論』の読み方』(宇田亮一)を読み終わりました。第1章、第2章で吉本隆明の『共同幻想論』の概要を描いてくれて、これがすごく丁寧で読みやすい。とはいえそもそもの大著を説明してくれる本についてここで改めてまとめても、と…

  • (宇野 重規 (著), 若林 恵 (聞き手))実験の民主主義-トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ

    あとがきにあるように、選挙を通じた立法権だけではなく、より執行権、行政との距離を、政策形成において市民の問題意識を反映させることを議論した部分と、もうひとつがアソシエーションとしてのファンダムについて、ポピュリスト指導者や悪い意味での総動員…

  • (宮下直)ソバとシジミチョウ

    先週読み終わったのは『ソバとシジミチョウ』(宮下直)。前半は脱自然化の人類史や里山の環境に関する章が続いて、第3章が表題のソバとシジミチョウになっています。フィールドワークをもとに、絶滅危惧種であるミヤマシジミとその周辺の生態系がまとめられ…

  • (富岡幸一郎)古井由吉論 文学の衝撃力

    古井由吉の著作を順に追いながらその変遷(継続)を読み解いていく内容です。一作ずつに割かれる紙面は必ずしも多いわけではないんですが、一方でそもそも一作ずつを字面から追うものでもないよなという感じは特に古井由吉作品に関してはわかる気がします。対…

  • (小松錬平)『ルポ 鯨の海』、(松浦義雄)『科学の泉(9) 鯨』,(小松 正之)『江戸東京湾 くじらと散歩―東京湾から房総・三浦半島を訪ねて』,(田島 木綿子)『海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること』

    昨日読み終わった『ルポ 鯨の海』(小松錬平)、『科学の泉(9) 鯨』(松浦義雄)は漁に関する内容です。前者は1973年、1944年の出版。いまと比べて50年前と戦時中の意識がどうだったのかが見えそうで、古本市で買ったまま積んでいました。『ル…

  • (小津 夜景)いつかたこぶねになる日: 漢詩の手帖

    地衣類、都市生物ときて、つぎはカワイルカの本でも読もうかなって思ったところで急に気分転換をしたくなりました。ただ今思い出すととこの本も、一つ前の本も、以前フォロワーがタイムラインに載せていたものをメモしたものだった気がする。そして、直近に読…

  • (居眠りファンクラブ)イン・ザ・シティ

    少しずつ読む。3作品収録で、特に「ふたりきりの街」が好みでした。優しい彼と、彼からは優しいと言われる(そしてきっと優しくあろうとしている)私の2人が過ごす世界が3頁。ほころびはそこら中にありそうなのに、この3頁のなかにそんなものは存在しなく…

  • (居眠りファンクラブ)ゆがんだ7月

    『ゆがんだ7月』(居眠りファンクラブ)をもう一度読み返す。窓から入る日差しが強い。日記って書いてから時間をあけて読み返すとなんだこれってなったりするフィクションめいた感じがすることあるけど、この作品はそれをコテにしたやり方がよいし、最後の日…

  • (岡田睦)岡田睦作品集

    収録作の「一月十日」が一番頭に残っています。日記を書く、日記の種になるメモを書く、メモのメモを書く、思ったことを無意識にすべて口に出すようになる、言葉が出なくなる、何も書けなくなる。「カイダンヲオリテ」とつぶやいて、階段を降りてきて、電気炬…

  • (徳田秋声)あらくれ/新世帯

    「あらくれ」は主人公が暮らしを転々としていきながら世を生き抜いていく姿を描いており、「新世帯」も同様の読み心地なんですが、こちらはあくまで一つの世帯のその土地での暮らしの一部を切り取ったものになっています。前者が物理的に移動をし続けている一…

  • (戸田山和久)教養の書

    大学新入生、あるいは高校生を対象に書かれた本で、ブルデュー等についてはさらっと流す代わりに複数の映画を題材に話を展開させたり、話を何度も脱線をしたり、めちゃくちゃ読みやすい。今のわたしはこれくらいがちょうどよいです。戸田山和久氏の本はできる…

  • (日本石仏協会)日本の石仏 季刊第20号 特集●丸石信仰

    先日買った『道祖神まんだら』の参考文献にあがっていたものです。現在も刊行されている季刊誌で4月には176号が出ていますが、丸石道祖神を特集としたのはバックナンバーのタイトルをみると1982年のこの第20号のみのようですね(トピックとしてはそ…

  • (杉本真維子)三日間の石

    詩を書く方のエッセイ集です。わたしは詩を読むことができなくて、何度か挑戦をしてはだめだったとなっているんですが、エッセイなら、それにタイトルや装丁の良さも合せ技で手に取ってた本。とても良かったです。本を読むときには気に残るような場所があると…

  • (柴崎友香)あらゆることは今起こる

    『あらゆることは今起こる』(柴崎友香)を読み終わった。あらゆることとは人間にとって、まさしく、まさしく今起こるのだ、と考えた。数十世紀の時間があろうと、事件が起こるのは現在だけである。空に、陸に、海に、無数の人間の時間があふれているけれども…

  • (柿沼 万里江 (編集), ローベルト ヴァルザー(原著), パウル クレー(原著), 若林 恵 (翻訳), 松鵜 功記 (翻訳) )日々はひとつの響き: ヴァルザー=クレー詩画集

    『日々はひとつの響き: ヴァルザー=クレー詩画集』(柿沼 万里江 (編集), ローベルト ヴァルザー(原著), パウル クレー(原著), 若林 恵 (翻訳), 松鵜 功記 (翻訳) )を読み終わりました。ローベルト・ヴァルザーの詩にパウル・…

  • (濱口竜介)他なる映画と 1

    年末の特集上映がはじまるまでに1、2巻ともに読み終わる予定だったんですが、結局同時進行で別の本を読んでいたので1巻しか間に合わなかった。内容はめちゃくちゃ良いです。わたしは映画の技法解説ってぜんぜん読んだことなかったんですけど、この本はかな…

  • (濱口竜介)他なる映画と 2

    『他なる映画と 2』(濱口竜介)を読み終わった。レクチャーを中心とした1に対して、こちらは寄稿された文章がまとめられたものです。ある監督、ある作品に対して、その良さが何に由来するのかをていねいに書いてくれており、その対象となる部分がいくつか…

  • (火田詮子舞台活動50周年記念誌)実録 火田詮子

    『実録 火田詮子』(火田詮子舞台活動50周年記念誌)を読んだ。先日みた演劇の物販で買ったもの。そのときに思い出したんですが、発行された頃にもいつも入っている古本屋さんに積んであるのをみかけてたなと思って、奥付を確認したら発行人がそのお店の店…

  • (町田康)残響 中原中也の詩によせる言葉/そこ、溝あんで

    『残響 中原中也の詩によせる言葉』(町田康)を読み終わりました。先日の町田康の講演に行く際に寄った古本屋でたまたまみかけたものです。わたしは詩を読むことができなくて、このタイミングしかないと思ってよみはじめたところがあります。本作は中原中也…

  • (町田康)私の文学史: なぜ俺はこんな人間になったのか?

    小説、随筆、詩を書いている町田康が自分語りをすることになった講演を取りまとめた本です。本との出会いから原体験、パンクバンドINUとしてのデビュー、詩人、小説家としての文体について、古典との関係などをすごく平易な話で語ってくれるのでとても読み…

  • (町田康)記憶の盆をどり

    『記憶の盆をどり』(町田康)です。短編集でまだ2本しか読めていないんですが、そのなかの「山羊経」がとてもよかった。一見すると主人公がそのときにみたこと、きいたこと、おもったことがだらだら流れ続いているような文章で、だから何か無秩序な描写が続…

  • (石川博品)四人制姉妹百合物帳

    とても良かった……。女子高に通う、通っていた4人(3年生2人、2年生、1年生)のサロン活動を通じた学園生活を描いた作品です。序盤から下ネタが登場するのでちょっと面食らうんですが、何というかそれが力技で面白がらせるだけのネタじゃなくて、この学…

  • (神田橋 條治 (著), 林道彦 (編集), かしま えりこ (編集) )神田橋條治 精神科講義

    『神田橋條治 精神科講義』(神田橋 條治 (著), 林道彦 (編集), かしま えりこ (編集) )を読み終わりました。先日久しぶりに読書メーターをみたら、ツイッターからいなくなってしまったフォロワーが立て続けに2人、ここ数ヶ月に読んでいた…

  • (稲田一声 (著), 坂永雄一 (著), 春眠 蛙 (著), 千葉 集 (著), ふじみみのり (著), 暴力と破滅の運び手 (著) )《ドンキー・アーカイヴ》vol.2: 稲田一声 第十五回創元SF短編賞 受賞記念企画

    『ドンキー・アーカイヴ 第2回配本』、どれも面白かった。特に「夏を知らない蝶たちは」(暴力と破滅の運び手)は小さい頃の夏の不思議体験を描いたものなんですが、その冒頭の場面、夜の山からヤギの背に荷物を積んだ主人公が降りてくるところから感じる不…

  • (稲田一声 (著), 坂永雄一 (著), 春眠 蛙 (著), 千葉 集 (著), 暴力と破滅の運び手 (著))《ドンキー・アーカイヴ》vol.1: 男たちと、その傷

    『《ドンキー・アーカイヴ》vol.1: 男たちと、その傷』(稲田一声 (著), 坂永雄一 (著), 春眠 蛙 (著), 千葉 集 (著), 暴力と破滅の運び手 (著))を読んだ。面白かった……。収録作で特に好みだったのは「ブラッドブラザーズ…

  • (筒井武文)声の映画史: 東京藝術大学大学院映像研究科講義録

    『声の映画史: 東京藝術大学大学院映像研究科講義録』(筒井武文)を読み終わった。とてもよかった。講義とインタビューの記録です。監督だけではなく、撮影監督や特に編集者の方が多く登場して、それぞれが実作のなかで監督と交わしたやりとりだったり考え…

  • (絲山 秋子)逃亡くそたわけ

    「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」軽い気持ちの自殺未遂がばれ、入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡が始まった。道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突し…

  • (草野 原々)最後にして最初のアイドル

    「最後にして最初のアイドル」「エヴォリューションがーるす」「暗黒声優」の3作が収録されたSF短編集です。星雲賞受賞のタイミングでめちゃくちゃ話題になっていて買ったんですが、『最後にして最初の人類』(小説)を読んでないことを言い訳に後回しにし…

  • (葛西 善蔵 (著), 阿部 昭 (編集))葛西善蔵随想集

    小説を読んでいないのにたまたま古本屋でみかけたからって先に随想集を読むのもなんとなく行儀が悪いというかそういう気もしますが、古井由吉が何度か触れているので気になっていました。後期の口述筆記(いくつかはお酒を飲んだ状態の深夜に行われたものだそ…

  • (西川美和)スクリーンが待っている

    『スクリーンが待っている』(西川美和)を読み終わった。2018年から2020年にかけて行われた映画製作(『素晴らしき世界』)の過程に関する監督のエッセイです。事前の取材やスタッフの入れ替え、オーディション等々が監督の目線で感じた思いとともに…

  • (諏訪 哲史)アサッテの人

    『アサッテの人』(諏訪 哲史)を読み終わりました。来月みにいく予定の演劇の原作である『りすん』を読む前に、対になるという前作として先に読んだのが本作です。おもしろかった。吃音(きつおん)による疎外感から凡庸な言葉への嫌悪をつのらせ、孤独な風…

  • (諏訪 哲史)りすん

    『りすん』(諏訪 哲史)を読み終わった。ほとんどを入院中の妹と見舞いにくる兄による会話だけで書かれた小説。作中にも”『前作を同じ主題の理論編とすれば、本作は実践編となるべきだ。』”とあるように、前作である『アサッテの人』を引き継ぐような内容…

  • (週末翻訳クラブ・バベルうお)BABELZINE Vol. 2

    海外文学の翻訳短編集です。収録作だと「メンデルスゾーン」(セス・フリード 白川眞 訳)が特に好みでした。あの夏、ぼくの父さんは巨大アライグマとライバルになった。平穏な日常を取り戻すべく、家族はアライグマと対決する。もう戻らない少年時代の、ひ…

  • (週末翻訳クラブ・バベルうお)BABELZINE Vol. 3

    『BABELZINE Vol. 3』(週末翻訳クラブ・バベルうお)を持ってきました。夏の間はカバンが小さいので財布等と合わせてこのサイズを持ち歩くとぱんぱんになってしまうぜ。まだ冒頭ですが、収録短編のうち「帰郷」(作 キャロリン・アイヴス・…

  • (金 悠進)ポピュラー音楽と現代政治: インドネシア 自立と依存の文化実践

    とてもおもしろかったです。インドネシアにおいて2019年に上程された「音楽実践法案」。これが音楽実践における表現の自由を規制しているものとして多くの批判を受け、廃案されたことについて、インドネシアにおける音楽シーンと民主化のうねりを整理して…

  • (馬の博物館編)フェラルの場景 -カナダ・セーブル島の再野生馬群-

    馬の姿(写真)をこんなにまじまじと眺めたの初めてかもしれない。数年前に動物園にいったときも目の前に見たサイの見た目に衝撃を受けたし、実際のところ動物の姿って全然知らないんだよな。何か思ったより顔のバランスが大きい気がする……。とか思いながら…

  • (高瀬康司 (著, 編集))アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論

    『アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論』(高瀬康司 (著, 編集))を読み終わった。監督、アニメーター、撮影監督の対談やライターの文章が載っていて、特に前半の対談ではデジタル撮影の話が何度も出ているんですがやっぱりそのあたりが読ん…

  • (高良 和秀 (著, 編集), ゆめの (イラスト))映画技術入門

    『映画技術入門』(高良 和秀 (著, 編集), ゆめの (イラスト))を読み終わりました。とても良かった……。「映画を映し、記録するしくみ」についてフィルム、スクリーン、プリント、音響といった形に章を分けてそれぞれの歴史を説明してくれる本で…

  • (鴨居玲)踊り候え

    『踊り候え』(鴨居玲)を読み終わりました。画家、鴨居玲の文章を集めた本です。先日の「本のさんぽみち」で購入しました。鴨居玲の作品は、昨年末の大雪の石川県で展示をみて以来なんですが、ちょうど一昨日この本が売られていて、しかもちょうど東京で展示…

  • (鷲羽巧)言葉だけが最後に残る 鷲羽巧エッセイ集

    『言葉だけが最後に残る 鷲羽巧エッセイ集』を読み始めました。『舞踏会へ向かう三人の農夫』に関する文章を読みながら、いつか読もうと思って買った文庫本を何年も棚にさしたままであることを思い出していた。当時どういったきっかけで買ったかは思い出せな…

  • カモガワGブックスVol.5 特集:奇想とは何か?

    『カモガワGブックスVol.5 特集:奇想とは何か?』を読んだ。とても良かった……。奇想SF、奇想ラテンアメリカ小説、奇想推理小説、奇想ホラー小説、それに奇想ゲーム等々のレビューが冒頭から並んでいてどれも興味をそそられる(もちろん紹介の仕方…

  • ユリイカ 2024年1月号 特集*panpanya ―夢遊するマンガの10年―

    『ユリイカ 2024年1月号 特集*panpanya ―夢遊するマンガの10年―』を読み終わった。多くの寄稿文が収録されているんですが、やっぱり巻頭の本人インタビューよかった。この世界の、無限に取りこぼされ続けているように思える膨大な情報、…

  • わが星

     本の感想の前に、演劇の感想を載せておきます。Youtubeで『わが星』(ままごと)をみました。めちゃくちゃよかった……。わたしは演劇に疏すぎるので余計なことをいいそうなんですが、音楽、リズムで演劇ができてる……!っていうアホな感…

  • 新潮 2021年 03 月号

    52人の日記リレー366日分が気になって買いました。著者として迫力ある名前がずらっと並んでるんですが、それぞれの一日でやったこと、読んだ本や漫画、映画に何を思ったかなどを読んでいるとその名前の一覧と比べてかなり印象が違ってとても楽しい。『ニ…