きっかけは以前読んでいたヘッケルの『生物の驚異的な形』で、これは「市川春子の本棚」に記載されていたものなんですが、放散虫などを二次元的に整理配置したこの図版集のイメージは強烈で、すごく味があるというか頭に残るタイプの本だったんですよね。それで名前を覚えていたヘッケルの研究やその思想をまとめた本が出たということで手にとったものです。
進化論を梃子にした一元論的な世界観をもとに行われた数多くの研究や活動(政治活動含む)を、19世紀当時のドイツ、あるいは世界のなかに配置して丁寧に辿られています。いや、それにしてもヘッケル自身の世界観から広がる範囲というかバイタリティが異常すぎる。
分野を継ぎ接ぎしながらゴリ押ししていくスタイル(に見えなくもない)各論以上に、それを巡って行われた同時代人との論争がおもしろくて、多分それを描くためにこの本も同時代の情報をふんだんに盛り込んだんだろうなって思います。タイトルの『ヘッケルと進化の夢』に”ファンタジー”のルビが振られているのもそういうことなんだよな(?)って気づいたときはちょっとだけおもしろかった。いや、今のは冗談で、この本の中にそういう皮肉めいた目線は一切なくて、それがこの本の良いところでもあります。それでいてこのヘッケルの影響があらゆる方面に残っているのも読み物として面白かったね、読ませ方がうまい。
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