(徳田秋声)あらくれ/新世帯

「あらくれ」は主人公が暮らしを転々としていきながら世を生き抜いていく姿を描いており、「新世帯」も同様の読み心地なんですが、こちらはあくまで一つの世帯のその土地での暮らしの一部を切り取ったものになっています。前者が物理的に移動をし続けている一方で、後者はそうでもない。暮らしも実直に行われていて安定している。それなのに何処か風が吹いたら倒れそうな、植え替えて根を張る前の植物のような印象を、不安や危なげとは違うかたちで描写していてすごい……となりました。あとこれは余談というか、オノマトペがめちゃくちゃ使われていて今の時代から読むとそういうのありなんだ……っていう感じはちょっとあった。よかったです。

2023年3月21日

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