収録の「草の響き」を読む。この作品を映画化したものを昨年みてめちゃくちゃくらったんですが(BDも買った)、原作をこれまで読んでいませんでした。具合のよくない今ではありますが、逆に今読まないといつ読むんだ?という感じもあり手に取りました。
心を病んだ主人公が仕事を休み(そして辞めて、転職をして)毎日朝夕に(当初は)運動療法としてひたすら走る。その連続のなか、それでも出来事は一回限りで、だからこそ積み重ねていくしかないという思いとその重さを描いています。読んでいると、映画のパンフレットにもある通り映画で新たに登場人物や終わりかたを設定しているものが多くあることに気付きます。比べてこの原作はかなり(映画以上に)ストイックな文章で、三人称ではあるんですが基本的には主人公の息遣いを聞きながら、その中でたまに誰かと話をした瞬間とかにはかなり硬い石を飲み込むことになるというか、その飲み込む瞬間を広く映像にしたのが映画版だったんだな……っていう感じがする。主人公自身は自分の中がおかしくなってしまうことに怯えながら、それでも軽やかに走り続ける自分というのが乖離せずに同居していることがどうしてもわたしはくらってしまうんだよな。とても良かったです。
(追記)
収録の表題作「きみの鳥はうたえる」も「草の響き」と同じく映画はみていて原作は読めていなかったものです。とてもよかった。これは映画の映像がすごくて、設定は変わっているのに終始あの三宅唱監督の映像が頭に浮かんでしまうんだよな。ところで文中にでてきていまさら知ったんですがビートルズに「And Your Bird Can Sing」っていう曲があるんですね。始めて知りました。そして音楽に関してだとサントラを聴いていたら収録されている「And Your Bird Can Sing」(Hi’Spec)が先日アルバムを聴いたOMSBの「波の歌」のトラックだってことにもはじめて気付きました。いや、それにしても映画「きみの鳥はうたえる」のパワーを改めて感じています。
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