長かった、これは読みにくいという話ではなく、単純にわたしのメンタルがずっと読書に向いていなかったことがあります。いや、序盤はまあまあ読みにくというかだるいところもありますが……。
解題を読んでいると、平家物語は壇浦合戦から50年後頃に成立したもので「語り本系」「読本系」があり、本来の姿は読本系に多く残されているとされているようです。この平家滅亡後から各地に残った記録、思い出が編集されて本になり、それが語られてまた本に逆輸入されて、という流れがあまりに美しい成り立ちなんだよな。それを反映してか今回の現代語訳では無数の語り手が登場し、特に終盤は語り口がどんどん入れ替わっていき、これで話にリズムが出てきてぐいぐい読めます。うまい。『犬王』に出てきた「平家の無念の声」というのもこういう複数の語り手がいることを想定している気がしてきます。それぞれが感じた無常エピソードの集積が平家物語なんだよな。
それもあってか登場人物に対する目線も基本的に弱者に寄り添った形で、それは同一人物に対する評価がぐるぐる変わることもあるんですが、いや、それにしても通して読んでるとこれ本当に同じ話の続きか!?ってくらい話や視点がぶれることもあるので現代語訳が大暴れしてるのかあるいは……って具合でいまは原文がかなり気になっています。特に十の巻、十一の巻あたりめちゃくちゃよかった。「水は夢を見るか」のくだりはこんなの原文にあるの!?ってくらいキマッてました。とてもおもしろかったです。
コメントを残す