(古井由吉)水

『杳子・妻隠』の次に読んだ初期(?)の短編集になります。冒頭収録の「影」が芥川賞受賞第一作。 古井由吉本人が”人の評価は別のものとして、著者自身が後々まで懐かしむ作品があり、わたしにとってこの短編集はその一つである。”としているような作品なんですが、やっぱり収録作どれもめちゃくちゃ良かった……。

わたしは寝る時間になって布団に入って、でも特に疲れた夜なんかはすぐに寝付けないから何気なくうつ伏せになってみたりすることがあります。そのときに両腕両足の力を抜いて沈み込むような、指先や足先を身体のより内側に持っていくような想像をすることが昔からあるんですけど、そういう状態を思い浮かべてしまう。私自身はこの身体の力が抜けて、一方で身体の輪郭を意識するような時間に快な部分が少しあって、『水』は読んでいるとその釣り合いをひたすら小説に落とし込んでいるような感じがあって居心地が良いんだよな。

2021年8月29日

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