(メノ・スヒルトハウゼン (著), 岸 由二 (翻訳), 小宮 繁 (翻訳) )都市で進化する生物たち

『都市で進化する生物たち』 を読み終わった。都市生態学の本で、冒頭からおもしろい事例の紹介が続きます。20世紀後半にロンドンの地下鉄路線ごとに別の遺伝情報を持つことがわかった蚊、都市の煤汚れとその環境対策による浄化によって体色を変えてきた蛾、鳥の羽の色、餌のとり方、公園ごとに違うネズミ、緑化スポットごとの植物の違い。どういった淘汰圧がかかってきたのか、記録や実験がたくさん紹介されていて楽しい。一方で原著のタイトルが『Darwin Comes to Town』となっているとおり、後半に入ると都市を建築する人類と、その都市で進化した生物たちによる生態系の考察に入っていき、おもしろい、けど……とはなる……。そのあたりは、過去に批判を受けたエピソードや、草原に沼地に囲まれた自分の幼年期の思い出なんかも出てくる目配せもある。

言い換えれば、わたしたち人間の残す足跡が大きくなればなるほど、わたしたちの周囲の自然は縮退し、変化し、より貧困化するのだ。しかし、生物学的には貧困化するかもしれないが、これら都市的生態系は、なお、本物の生物を生息させ、本物の生態と本物の進化が進行する本物の食物網の中に維持される、まさしく生態系そのものなのだ。(『都市で進化する生物たち』318頁)

 

2023年12月29日

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