『ホーリー・カウ』をみました。チーズ職人の父、7歳の妹と暮らす無軌道な18歳のトトンヌ。ある日不慮の事故で父が亡くなり、残された妹と友人たちといっしょにチーズ作りで一攫千金を狙うお話です。
主人公のトトンヌが本当にどうしようもない男過ぎる。映画の中でトトンヌが襲われる不幸はほぼトトンヌのせいです。ちょっかいを出した女性が年長のワルの連れ合いで、パーティで再開したときにからかわれればその相手の男を後ろから瓶で殴って逃げるし、チーズを作るとなったら知り合った牧場の女性と同衾しているあいだに仲間に牛乳を盗ませて材料を調達する。本気か? 『タイトルの「HOLY COW」とは「マジかよ!」「なんてこった!」など感嘆を表す言葉。』と公式サイトにあるけど、だいたいはトトンヌの行動に対して発生するんだよな。
そしてちゃんと報いを受ける。というかチーズ作り自体、父の手伝いをぜんぜんしていなかったのでやり方をまったく知らないまま挑戦するので、最終盤になっても『鍋に手を入れるのが暑い! どうすれば?』って街角でチーズづくりを観光客にみせているおばあさんに聞きに行ったりするね(それはえらい!)。そしてその回答が『事前に冷水に手を入れておく』なんだよな。それはそうすぎる。これに思い至らないくらいの勢いで目的に突き進んでいくトトンヌの無軌道っぷりにどこか憎めないところがあるのかもしれない。
そういうトトンヌのどうしようもなさがそれだけでいやな気持ちにならないぎりぎりのバランス感がある。舞台であるジュラ地方の自然や画面のつなぎにいつも登場する牛。それにトトンヌ自身の振る舞いにも酔った父を助け起こしたり、妹を送り迎えするときの接し方だったり、そもそもこんなめちゃくちゃなことやっているのって生活のためでもあるんだよなというのを常に頭に思い出させてくれる。
おもしろい映画ではないんですが、わたしが労働でふらふらになっているとき頭をからっぽにしてみていると最後にちょっとだけ明るい気持ちになれる映画だった。たまにこういう映画をみられるとうれしいし、映画をみてこういう感じになるとうれしいかもと思う。冒頭に載せた曲は劇中曲です。
この映画の配給はALFAZBETなんですが、どこかでみた会社の名前だなって思って検索したところ佐藤真レトロスペクティブをやったところだった。そして、この『ホーリー・カウ』の次に予定している映画が『黒の牛』になっていて笑ってしまった。そんなことあるんだ。
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