(小川哲)地図と拳 上/下

『地図と拳 上/下』(小川哲)を読んだ。身構えて読み始めたけどかなり読みやすかったです。日清、日露、そして二次大戦後までの満州を舞台に地図を巡る戦争を描き、そしてそこに生きる人々を描いた物語。数十年にわたる時間のなかで国家について、建築について、そして過去を知り未来を想像する物語ということについて、戦争という大きなうねりのなかで登場人物たちそれぞれが考えたその蓄積がこの小説です。

10年後の世界地図はどうなるのか。戦争の歴史を知った読者としてこの本を読んでいるとその答えは頭にあるんですが、作中、架空の組織である戦争構造学研究所ではまさにそのことについて研究を行い、未来を予想していきます。そして”敗戦”の前に敗戦を知ることになる。この研究所の無力感と、それ以上にそれからの展開そのものがこの小説の強さであり、この本のおもしろさであり、大きく言えば小説の面白さなんだろうなと思いました。

時間。すべての建築は特定の時間に帰属する。現代建築は現代に、古典建築は古典に。そして、その時間を無限に延長しようとする。モニュメントの語源は「思い出させる」ことにある。拳の記憶を、その時間を、永遠に保存し、呼び覚ますこと。 『地図と拳 下』304頁

2025年10月12日

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