ただ、やるべきことを

『ただ、やるべきことを』をみました。中規模造船会社に務める主人公が人事チームへ異動になった直後、経営悪化に伴うリストラの実施が決定したことで退職基準の作成や人員の選定、そして面談を行うことになるストーリー。リストラを扱う映画はしばしばその対象者を主人公に据えて組織との対抗が描かれますが、この映画は主人公の属する人事チームに軸をくことで組織における自分自身のなかで折り合いのつかないことに対して主人公たちが摩耗しながらも飲み込んでこなしていく姿が描かれています。

お仕事アニメをみることができなくなってはや数年、この映画をみているあいだは個人的な労働の記憶と結びつきすぎていてかなり厳しい感覚があったんですが、それらが描かれながら最後、主人公と同僚がカメラに向かって歩いてくる早朝の場面が本当に良くて、こういう描き方をされたことで私自身飲み込めるものがあった気がしてきた。この映画のなかで唯一の光なのは登場人物のうち一人だけが前に向かって動くことができていることで、それ以外は何も解決していないし、状況は悪くなる一方なんですが。

観ているあいだ、私の労働の記憶が勝手に立ち上がってきて厳しかったところがあった。四年前、特命的な部署が立ち上がったときの明らかに八方塞がりな空気とその中心にいた同僚たち。周りもその状況を理解していながらそれでもどうにもできなかったし、階段を降りられなくなって休んだ日の身体の重さだとか、そういうものを思い出しながら座席に座っていても、この映画を最後までみていられたのは、主人公の道徳的な良心の葛藤を最後まで映し続けたことや、その上司たちの人間性の描き方に映画としてキャラクターは立っていたけどいやみがなくステレオタイプな人物像ではなかったことがある気がします。一方で主人公たちを美化しすぎることもないバランス感がある。とにかく、あまりに自分に引き付けて見てしまったので映画としての感想が書けない作品なんだよな。作品世界では朴槿恵大統領(当時)に対するデモが盛り上がり、社会を良くしようという機運が盛り上がっているなかで自分は……となった主人公が婚約者に仕事の話をすることができなかったことって、わたしにとってインターネットに労働の話をできないのと同じなんだよな(そうか?)。

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