とてもよかった。映画館の予告とかで流れてたときはすこし色眼鏡でみていたところがあったんですが、正直に言うとここ数日のタイムラインでわりと好評だったのをみていってきたところがあります。わたしはツイッターに生かされている……。
冒頭に流れるショッピングモール風景なんかはまだ少し乗り切れていなかったんですが、これはたぶんワイワイ楽しむ地元の大型ショッピングモールが舞台であることへの、あまりの屈託の無さが気になったんだろうな。わたしはあまり行かなかった場所なので……。でもそういう個人個人の体験みたいなものを、この作品は同じようにチェリーやスマイルの体験として描こうとしているのが伝わってきて、2人が邂逅してからは一気に乗れてしまった。
登場する一つ一つの要素を扱うのが上手かったのが一番頭に残っています。それはツイッター(風SNS)や動画配信、アナログレコードや俳句、スマホと一緒に持っている紙媒体の歳時記などどれもそうなんですが、例えばSNSは最先端のコミュニケーションツールではないし、レコードはレトロ趣味ではないんだよな。つまりオンライン/オフラインの付き合いを分けることもなく、物理媒体にノスタルジーや物欲を載せるわけでもなく、ただその形態を活かした描き方をしていたのがすごくよかった。
声に出したくないチェリーが文字としてSNSに流していた俳句と、それをビーバーによって街中に同じく文字でタギングされた俳句が(あたりまえだけど)ちがう効果を出していて、とくに俳句をきっかけにSNSでいいねをつけ合う距離感だとかを描いていたのはすごくグッときてしまうし、一方で街中に書かれた俳句は風景の一部として常に映り続けるんだよな。そこに重ねて最後の5・7・5ラッシュは十七音の俳句ならではの畳み掛けになってたのもよかった。
アナログレコードについても、思い出のレコードをさがそう!ってときにジャケット表面の大きな切り抜きからピクチャーディスクでは?って予想をしたり、ふとしたときに俳句雑誌に載っていた記事から関連の情報を拾ってきたり、真夏に空調の壊れたレコード屋でみんなで一斉捜索をしたり、そこからショッピングモールの土地の歴史を知っていく過程が描かれていて、こういう媒体に一般的に言われるレトロ感だったりノスタルジーなんかに由来するなにかじゃなくて、その形態自体をもとにチェリーたちがどういう体験をしたのかっていうところからひと夏を描いていてめちゃくちゃ良かったね……。
周りとの遮断につかわれていたヘッドホンについても、ラストはBluetooth接続で配信音声を、山桜の音楽を聴くためのものになってそれが作品BGMと重なったのも良かった 。
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