WALKUP

『WALK UP』をみた。とても良かった……。

映画監督のビョンスは、インテリア関係の仕事を志望する娘のジョンスと一緒に、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有するアパートを訪れる。そのアパートは1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、地下がヘオクの作業場になっている。3人は和やかに語り合い、ワインを酌み交わすが、仕事の連絡が入りビョンスはその場を離れる。ビョンスが戻ってくると、そこには娘のジョンスの姿はなく…。公式サイト

4階建てのビルのなかで行われる会話劇、固定した室内の画面での長回し。そしてこの長い会話が、ホン・サンス作品ではよくあるように、とても気まずいんだよな。いや、会話自体は盛り上がっているんですが、「あっ、それは相手が気分を害する可能性があるからやめたほうが……」って思うようなセリフがぽんっと投げ込まれて一瞬画面が沈黙する瞬間とか、会話に間があいてとりあえず乾杯を繰り返す場面だとか、この気まずさを含めた会話全体が、でもその気まずさなんてなかったかのように人生が(関係が)進んでいくのは、この気まずさって映画やアニメの作品では省略される部分だけど、本当はコミュニケーションや人生に当然のように含まれているものであるってことなんだよな。

今作はその関係の発展をビル内の縦のフロア移動で切り替えていたのがシステムっぽくてよかった。しかも会話じたいは長尺なのに場面の切り替えは一瞬で、事後的に会話の中から「あっ、この二人がいまは同棲しているんだ」っていうのを察することになる。

白眉は最後、煙草を吸ってから車に乗り込み、発車するかと思ったら即車から降りてきて、その瞬間におそらく時系列が変わった瞬間。映像としては同じ場面の連続なのに、車に乗る前と降りたあとでは多分時間が逆戻りしている。それがあまりに違和感なくスライドしていたのでちょっと良すぎて笑ってしまった。とても良かったです。

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