『バニシング・ポイント』をみました。映画館から毎月届く上映チラシ(会員)に入っていて気になっていた作品です。ちょうど月末が会員期限なので更新の手続きもしました。上映後に新しい会員証を受け取るのを忘れないように。
めちゃくちゃ面白かったです。車の運送屋である主人公コワルスキーがデンバーからサンフランシスコまでの約1,900kmの移動を15時間でやってみせると友人に宣言して夜道を出発。速度違反で追いかける警察のバイクを突き放し、スピード勝負を仕掛けてくる男も突き放し、パトカーに囲まれては砂漠を疾走し……ひたすらアメリカ西部の荒野を爆走する映画です。
その主人公が警察に追われていることを無線の違法傍受で聞き取ったラジオDJが、狂言回しとしてコワルスキーの現状を放送し、またコワルスキーへ語りかけていく役割です。このDJがまたハイテンションで絶叫し、放送で流す音楽はカントリー、ロックンロール、スワンプ等々ノリノリの曲ばかりでそれがまたコワルスキーの爆走に完全にハマっているんですよね。今こういう映画をつくろうとするとゴリゴリのEDMになりそうなところ、パンフレットによると録りおろしのこういった楽曲が映画の録られた時代性もそうだし、何より映画内の時代をうまく表現している気がします。なにより曲が良いです。
主人公は荒くれ者というよりも寡黙でほとんどセリフなし。それでもキャラ造形がうまくて、追ってきた警察のバイクやスピード勝負の相手がクラッシュしたら一度車を止めて無事を確かめることもする。ヒッチハイクの男も乗せる(強盗行為を受ければ引きずり出す)。そしてそうやって爆走する車を止める瞬間に過去のフラッシュバック映像が少しだけ流れることで人物の深掘りがされていきます。いちばん良いのはラジオDJが主人公に語りかける場面、助けようという気持ちを表明すると面倒そうにラジオを切ってしまうところと、一方で砂漠でパンクしたり覚醒剤が切れたときはちゃんと目に入った人を頼るところ、こういう微妙なラインの世間との距離感の描きが絶妙でした。その主人公が最後に一番の笑顔でブルドーザーに封鎖された道路に向かって突っ込んでいくシーンがクライマックスです。
めちゃくちゃ面白かった。特に主人公のキャラ造形と映像、音楽のマッチ感が最高です。上映後に買ったパンフレットもめちゃくちゃ内容が充実していて、アメリカン・ニューシネマの概観から解説、キャストやスタッフの詳細な説明、サントラの楽曲を1曲ずつ解説、ロケ地マップ、脚色のカブレラ=インファンテのコルタサルとあわせた紹介記事、その他細々とした情報までがずっしり詰まっていておすすめです。
個人的には作品内で流れていた「Runaway Country」っていう曲が以前から好きで、それが流れたときはウオオ!となりました。ずっと前(今確認したら2年前)からspotifyのプレイリストにいれて聴いているんですが、ちょうどこの映画の時代だったんだな~って確認したらどうも映画用の曲で、そしてこのプレイリストに入っていたのもこの映画、バニシング・ポイントのサントラから引っ張ってきていてまたウオオ!となりました。最初に何がきっかけでこの曲を知ってプレイリストにいれたのかは覚えていないんですが変な奇跡がおこっていました。改めて聴くとこの曲以外も良い曲ばかりならんでいるサントラなのでLPをいつか見かけたら絶対買います。
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