Underground

地下の暗闇から、蠢く怪物のように「シャドウ(影)」が姿を現す。シャドウ(影)はある女の姿を借りて、時代も場所も超えて旅を始める。地下鉄が走る音を聞き、戦争で多くの人々が命を失ったほら穴の中で死者達の声に耳を澄ませる。そんな道行きの中、シャドウ(影)は、かつてそこで起きたことをトレースしていくようになり、湖の底に沈んだ街に向かう―。公式サイト

よかった。冒頭から地下空間とそこに投影されたプロジェクションの映像が映り、どこの、何のための空間化は明示されないまま、その壁に沿って影が動き回る。気づけば地上の民家にいて、窓を明けて外の空気を取り込んだり朝ご飯の準備をしたりしている。また気づけば沖縄の地下壕にいて、戦時体験の語りを水脈の音と合わせて聴いている。次は山寺の、畳敷の部屋の奥の、壁をぶち抜いて掘られた空間の奥に岩肌を削って並べられた仏のそばにいる映像。こうやって、影が地下空間をつなぎ、そして日常をつないでいく映像が続きます。

印象的だったのは地下鉄が走り抜けていく場面です。そもそも地下鉄が暗闇を走っているところを列車外から撮影することってあるんだっていう映像のおもしろさもあるし、先日読んだ『スクリーンが待っている』のなかで東京圏域の地下鉄や山手線は撮影許可が出ないことによる駅や列車を使った撮影の困難さに触れられていたのを思い出した。目立つ生物がおらず、風も入らないため基本的に動きがない地下空間で巨大な列車が通過していくのはかなりパワーがあってよいです。

セリフはほとんどなくて、唯一沖縄の地下であることを明示されながら戦争体験が語られる場面だけ声が際立って感じられ、そのリズミカルな語りと地下の暗がりとが、ぼんやりと連続した映像をみていた頭に強く入ってきた。

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