監督の初期作品とのことで、『逃げた女』と比べても時間の流れやそれに伴う関係の変化なんかも描かれておりストーリーに入りやすい、って書きかけたんですけどやっぱりうまく入れないんですよね。『逃げた女』ではよりスマートにちょっとした会話のつまづき程度でこなされていた個人間の微妙なやりとりがより鮮明に不協和をしていて、いや画面に映る2人の間では一瞬のことですぐに飲み込まれてしまうんですが、みている側には間違いなくいやな感じを残す瞬間がおそらく意図的に何度も差し込まれているんだよな。もちろんあからさまな喧嘩をしたら翌日に仲直りをするシーンもあるんですが、それ以上に喧嘩以下の、みている側からすると踏み込み過ぎだったり、押し付けがましかったり、不遠慮だったり、傲慢だったり、そういった瞬間をそのままにただ時間が経過して、しかもそのままいいムードになったりする。
このあたり、とにかくストーリーの溝と言うか本来不要な部分としてやりとりから削られるところがダラダラと残されているような感じがあって、そこに惹きつけられるものがあるのかもしれない。いま書いててふと思ったんですが性行為のシーンがいずれもワンカットで描かれているのも同じ理由だったりするのかな。
特に『オー!スジョン』では相手が性行為未経験だと知ったあとの男の表情や振る舞い、箸の使い方を教えるシーンだとかがどうしても引っかかりとして頭に残っていて、これを作品の前半と後半に切り分けて、それぞれで男目線、女目線で描きなおしてるのがまたやられるというか、女の目線で見るとその部分は見過ごされて(?)描かれていなかったりする。
気まずさと言うか、いやな感じというか、つまづきというかそういったものが繰り返されるなかでも登場人物は楽しんで、怒って、いいムードになって、この塩梅がなぜか終わる瞬間にこちらもちょっといいものを観た気分になるのが謎ですごい。
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