小説家の映画


『小説家の映画』をみました。とても良かった……。ホン・サンス監督作は前にみた『逃げた女』(https://atatakaifuton.com/works/the-woman-who-ran/)もめちゃくちゃよかったんですよね。

長らく執筆から遠ざかっている著名作家のジュニが、音信不通になっていた後輩を訪ね、ソウルから離れた旅先で偶然出会ったのは、第一線を退いた人気女優のギルス。初対面ながらギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主役に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛ける。かつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えたふたりの思いがけないコラボレーションの行方は……。公式サイト

場面ごと、人と人がやりとりをするなかでうまれる一瞬の軋み、とまでいかないような気まずさ。間の保たなさや、ちょっとそれは踏み込み過ぎでは……?っていう発言。それが長尺のやりとりでそのまま流れていく。ちょっと顔をそむけたり、別れたあとに一つ息をついたり、そういう社会でのやりとりで起こるもので、わたしが避けたいと思っているものがどんどん出ては流れていく。でも、だからといって登場人物たちの人間関係がめちゃくちゃになることはなくて、ただそういうやりとりがあっただけなんだよな。だから『映画を撮る』っていう提案も乗り気だったり、そうでなかったり、それは自分と親しい人がいるなかでの会話なのか、あるいはお酒の席だからなのか、場によって違ってみえてくる。

やりとりとしてグッドコミュニケーションじゃない(というか完全にバッドコミュニケーション)ことが続いても、それでも最後に出てくる映画のワンシーンはめちゃくちゃに良いものだし、そういうことがある、という描き方がとても良かった。『逃げた女』にも共通するところがある。

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