『他なる映画と 2』(濱口竜介)を読み終わった。レクチャーを中心とした1に対して、こちらは寄稿された文章がまとめられたものです。ある監督、ある作品に対して、その良さが何に由来するのかをていねいに書いてくれており、その対象となる部分がいくつかの文章を超えて繰り返し別の文脈で登場していて、それが最後、本書描き下ろしの「ある覚書についての覚書――ロベール・ブレッソンの方法」のなかで対象の文章を腑分けするときの道具になっており、全体を通じてすごく読みやすかった。そしておもしろかったです。そのなかのひとつ、みすずに収録された「孤独が無数に、明瞭に」は雰囲気の異なる文章で、その冒頭に過去の自分の寄稿した文章を引用した筆者自身が、「読み返すと勇ましくも思えるが、今以てこれ以上に重ねるべき言葉はなく、もちろん差し引くべき何かもない。」としつつ始まるものがあります。
自分の志を資本などに測らせてはならない。そして、価値を感じないものにはできるだけ背を向け、それに自分の力を譲り渡さないこと。それは何度でも「今ここ」から始められる些細な、しかし立派な抵抗だ。 『他なる映画と 2』251頁
本全体を通じてこの節だけ、言い方が難しいというか悪い意味じゃないんですが強張りがあって、それはこの文章が寄稿されたのがみすず2023年8月号でこの号を持って休刊(紙からウェブへ移行)のタイミングだからこそというのもあったのかもしれませんが、とはいえそれがこの本に組み込まれているんだよな。単体で読むとちょっと身構えてしまう文章も、それがこの本に組み込まれているとただそれだけとは少しだけ違う印象があったことだけ日記に残しておきます。
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