『ショーイング・アップ』をみました。金曜日にみた『ファースト・カウ』の監督、ケリー・ライカートの最新作。
美術学校に勤める彫刻家のリジー(M・ウィリアムズ)は、間近に控えた個展に向けて地下のアトリエで日々、作品の制作に取り組んでいる。創作に集中したいのにままならないリジーの日常が、チャーミングな隣人や学校の自由な生徒たちとの関係と共に繊細に、時にユーモラスに描かれていく。(公式サイト)
おもしろかった。個展までの1週間。進捗は悪い。一方で創作活動がうまくいっており、かつ家主である隣人にたいして、毎日部屋のお湯が出ないことを訴えるが取り合ってくれない。美術学校の学部長をしている母と、陶芸を引退して見知らぬ旅人をお客に招いたり、隠居をしている父。庭師の仕事をやめて部屋にこもり、近隣住民に対して疑心暗鬼になっている兄。そして冒頭、飼っている猫が部屋に来た鳩を攻撃してしまって怪我をさせたことがこの映画のキーになります。
主人公はやりたいことなのか、やるべきことなのか、それをやる時間がとれないことに苛立ち、不安になり、それでもうまく言ったときには心がほぐれる。そういう細かな描写を重ねているうちに、仕事や隣人、家族、芸術家のコミュニティ、そういった諸々と主人公なりの距離感が伝わってくる。不安になるとつい電話をかけてしまう。人を心配して、嫉妬して、うんざりして、不安で空回りのように見える行動も、映画的にはハラハラする部分である一方で、人間としてみればまあそういうものだよな、という。なので最後、鳩が飛び立つというベタな場面(「傷なんて治ってたんだ」)で、なにか全部が簡単に、解きほぐされたような開放感があるんだよな。
やらなきゃいけないことをやるんだよ、だからうまくいくんだ。っていうフレーズははじめて聴いたとき別に心に響いたわけでもなく、それでもただずっと覚えている言葉で、折に触れて思い出します。ボブ・ディランの「Buckets of Rain」の歌詞です。おもしろかったです。
ケリー・ライカート作品といえば、劇伴がヨ・ラ・テンゴだったり、ペイブメントのメンバーが出演していたりとなにかとインディー界隈とつながりがあったんですが、今回はTy segallの音楽がながれてウオオとなりました。いや、規模的にもぜんぜん出てきておかしくないんですが、わたしにとってTy segallは数年前に少し音楽を聴けていなかったころに一気に来ていた印象がある(後追いで知った)ところがあって、その裾野をひたすら聴いていた時期が2年前くらいにあったのでなんとなく思い入れがあるんだよな。
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