目覚めるとそこは真夜中の図書館だった。瞬介(井之脇海)が倒れていた階段の両側には、吹き抜けの天井まで高く伸びた本棚がそびえ、あちこちの段に小さなヒトガタが潜んでいる。扉という扉を開けて外に出てみるが、なぜか館内に戻ってしまう。途方に暮れた瞬介は、導かれるようにして一台のグランドピアノを見つけ、そっと鍵盤を鳴らす。
やがて瞬介は、旧友の行人(大友一生)とその彼女だった貴織(木竜麻生)に再会する。三人は大学時代の演劇仲間だった。行人と貴織はもう随分前からここにいるらしい。他にも、見知らぬ中年男の出目(斉藤陽一郎)や謎の女絵美(澁谷麻美)もいる。行人は、この状況を逆手にとって、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは、行人が作・演するはずだった「ピアニストを待ちながら」。しかし、瞬介には気になることがあった。確か、行人は死んだはずでは……?
おもしろかったです。夜中の図書館に閉じ込められながら、なかなかやってこないピアニストがもしきたらお祭りを開くという演劇の稽古をする映画。出られない図書館や開示されない謎からくる閉塞感と、演劇の稽古の軽やかさは対照的で、この空間で何かを待つこと自体が設定よりも肯定的に見える印象があった(これは受け手次第な気もするし、その点については作中でもやり取りがある)。そう思ったけど、今映画の内容を思い返してみるとどちらとも取れるようにしてあったのかな、外的なお祭りを待つのではなくて、閉塞的な社会のなかにあっていかに自分のなかの待機状態を保ちつつそれを消化するのか。あるいはそれを誰かと共有できるかということを(観客のいない)演劇の稽古を繰り返す場面から思った。
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