PERFECT DAYS


『PERFECT DAYS』をみました。昨日の夜にみれなかったもう一作の方です。こちらも楽しみにしていました。役所広司が好きなので……。

東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、
静かに淡々とした日々を生きていた。
同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。
その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、
同じ日は1日としてなく、
男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。
木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。
それが男の過去を小さく揺らした。(公式サイト)

冒頭、早朝、路上の掃除の音で目を覚まして、小鉢で育てている植物たちに水をやり、身支度をして外へ出る。空を見上げてからコーヒーを買って車に乗る。スカイツリーがみえてくる場所でカセットテープを再生する。

壮年の単身で植物の小鉢を育て、フォークナーを読み、ルーリードを聴き、休憩時間には神社の境内でパンを食べながら、大きな樹を見上げて写真を撮る。仕事が終われば先頭に入ってお酒を軽く飲み、休日は古本屋にも寄る生活。

映画の冒頭で描かれたこのルーティーンが、完全にタイムラインから隠居したフォロワーたちの暮らしを移したエデンに思われて変な笑顔になってしまったところがある(私は彼らにこういうイメージを持っている)。良くない受け取り方をしてしまったな。なので最初の感想は「助けて~~!!」でした。

後半、男の毎日は繰り返されて、それでもみているうちに少しずつ違いはあることに気づいてくる。それとともに気づくのが光の反射や、陰がすごく美しいんだよな。神社の木漏れ日、明るい時間に入る銭湯のきらめき、これらが寝る時間になると画面を覆う。視覚でとらえる陰の動き、まばたきの間に捉えられない誤差のようなちらつき、そういう瞬間ごとの変化があって、主人公はいつも、折に触れて笑顔をみせるんだよな。同じような日々を繰り返しながら、変わらないものはないということを受け入れている、言い聞かせている。

数年ぶりに会った姪が、主人公がいつもカメラを構える神社の木の下でスマホのカメラを構える場面、姪を迎えに来た妹との本当に絶妙なやりとり(「これ好きだったでしょう」「本当にトイレの清掃を仕事にしているの?」「(抱擁)」)があまりにも良くて、負けましたって思った。とても良かった。

映画の中で、煙草(ピース)を買った主人公と、もうひとりのおじさんが咳き込む場面があった。良いなと思ったのでわたしもやっぱり一度だけ煙草買おうかなって思った。ちょうど昨日の夜に商店街を歩いていて、免許証で帰る自販機を見つけたんですよね。

 

(12/24追記)

画像

昨日みた映画『PERFECT DAYS』では光や影のうごきが何度も登場していましたが、これは鉄の箱に入った細かな傷、鉄たわしで擦ったような小さくてたくさん集まった傷が、光に反射して歩きながらみるときれいな箱です。その他、わたしが散歩をしていて見つけると嬉しいのは工事現場の、更地になった地面にガラスの破片がちらばって、夜になると車の灯りに照らされて点滅するように光るやつが好きです。

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