パフォーミングアーツ・セレクション 2024 間の時間

『パフォーミングアーツ・セレクション 2024
間の時間』のAプログラムをみました。『ジゼルのあらすじ』 (岡田利規 × 酒井はな)、 『Dance for Pleasure』(島地保武)です。

前者はタイトルの通り、ジゼルのあらすじをYoutubeで解説する動画の撮影風景という形で、演者がジゼルの各役どころを一人で踊り分けながらしかも解説をしていく内容です。なので劇伴もYoutubeの配信で耳馴染みのあるBGMが流れたりする。おもしろいのは、途中から演者である酒井はな自身のバレエ経験からくる解説やジゼルを演じてきた際のエピソードを交えての解説が始まって、そこにさらにYoutube配信に差し込まれるCM部分があったり、それが本来のジゼルのストーリーにかぶさってくる作りになっています。古典としてのジゼルの情報と、個人としてジゼルを踊ってきた経験から来る情報と、それを発信する最新の場の設定がコメディな脚本でシンクロしていて場内はずっと笑いが絶えなかった。それにしてもポストトークでも話されていたとおり、通常発話をしないバレエを踊りながら声を出すのは相当大変なもので、それが50分弱続けられるの全然素人からみてもすごかった。ただカメラに向かって演じているのか、客席に向かって演じているのかが割と曖昧だった。そしてそれはしょうがない事情もあって、配信風景の撮影っていうのはどうしても長尺の舞台を一人でやることからセリフが膨大にならざるを得なくて、当然それは相当に負担が大きいのでカメラの奥に撮影者の形でプロンプターを置かざるを得なかったところから来ているというのはありそう(今回は岡田利規が担当)。

後者は逆に、基本的に音楽もない無音の場でのダンスでした。3人、4人、2人、、と組み合わせを変えてそれぞれのダンスが続いていきます。ダンスを生で舞台でみるのってはじめてかもしれない。見始めてからしばらくのあいだは、無音のまま舞台上の数人が踊っていることの受け取り方がわからなくて、映画で長回しを見続けているうちに意識が飛ぶような感じになるのと同じ状態になったりしたんですが、それでもみているうちに、それぞれのダンスが聞こえてこないはずの音とは別に、例えば呼吸や接触やそういったものから連関している気がしてくる。途中、男性3人が重なった状態でしばらくうめき声を上げている場面があって、そのうめき声に合わせるかのように別のダンサーが踊っているところもあった。そして最後になって唐突に音楽が登場するとやっぱりそこにリズムがわかりやすく伝わるんですが、舞台に勢揃いしたダンサーたちの動きはいわゆる一糸乱れぬものとは別の、これまでみてきたそれぞれの連関の延長のまま踊っているようでその迫力がとてもよかったです。それにしても腕というよりは脚の、というか体幹をぐりぐり使うような低い姿勢の動きばかりだったのすごかったな……。

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