オーバー・フェンス


『オーバー・フェンス』をみました。良かった……。

家庭をかえりみなかった男・白岩は、故郷の函館に離婚して戻り、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。日々の楽しみもなく、ただ働いて死ぬだけ、そう思っていた。ある日、訓練校仲間の代島に連れていかれたキャバクラで、鳥の動きを真似る風変わりな若いホステスと出会う。名前は聡(さとし)。どこか危うさを持つ美しい聡に、白岩は急速に強く惹かれていく。遠い幻のように一瞬で過ぎ去ろうとする函館の夏、フェンスの先に彼らが見つけるのは愛か、希望か–。Amazonプライム

佐藤泰志原作の映画化。同作者の映画化作品は他に『きみの鳥はうたえる』、『草の響き』をみていてどちらもめちゃくちゃよかったので、何気なく配信リストをみていたら載っていたこの作品も再生してました。同じく舞台は函館。一歩引く形で社会との折り合いをつけた男が、それでも多かれ少なかれ社会と接触するということを肯定的に描かれていてよかった。フェンス越しに眺めている社会も、フェンスを超えて接触する社会も、どちらかを否定するような作品じゃないし、他人や自分の過去を認められると良いね、でもそうならないこともあるねという具合にあらゆるものが並置されて保留されているようなでもそれが悪いふうにはなっていない作品だった、よかったです。同じく職業訓練校に通う生徒たちの校外の姿もわずかずつですが示されていることで、最後のソフトボールのシーンが狭い訓練校という社会と、その先にあるそれぞれの暮らしの両方つまり社会全体が一同に介した場になっていて、そこに少しの爽やかなカタルシスがあった気がする。

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