オステンデ

『オステンデ』をみた。よかった……。先日まで上映していた『トレンケ・ラウケン』がめちゃくちゃおもしろかったラウラ・シタレラ監督の特集上映が始まっており、その一つです。本作の主人公も『トレンケ・ラウケン』と同じくラウラ・パレーデスが演じており、役名であるラウラという名前も同様。

オステンデのホテルを訪れたラウラが、同行者がやってくる数日間のあいだ、一人でホテルやプール、海をふらつきながら、同じ宿に滞在している中年男と若い連れ合いの女性二人に関心を寄せる様子を描いた作品です。ジョン・ル・カレを読んだりして過ごす宿の時間、ふとしたときに目に入る彼らの様子を目線で追いかけて、そのたびに電話がかかってきたり話しかけられたりして少し目を離すと姿が消えている。隣の部屋からはテープ音源のような声で「博士」に報告する声が聞こえ、反対の部屋からは嬌声が。この何気なく目や耳に入るあれこれに関心をもって意味を探るような行動は『トレンケ・ラウケン』でも描かれていた。途中から積極的に彼らのあとを尾行したりする場面もあるものの、そのときは画面のピントが大きくズレて彼らの姿は滲んだ染みのようになる。本作でのラウラは対象に積極的な介入はせず、ただのぞき見が繰り返されている。

終盤、彼氏がホテルにやってきたことでこれまでの捜査状況や推理を雑談話す場面があります。その推理は確かにどこか突拍子もないようなもので、「彼が君を見たのは、君が彼を見てたからだろ」「ひどい推理だ」とぞんざいに扱われながら、ふたりはホテルをあとにして終わり。かと思ったら、ここまで徹底してラウラの目線で描かれていた作品はまだ続きます。主人公たちが去ったあと、誰の視点かわからないまま、中年男性たちの姿を追いかけながら海辺に向かい、そして結末へ……。探偵役(といえるほどではないが)である主人公が物語に介入しなかった場合の『トレンケ・ラウケン』というか、これは論理が逆で、ここで介入した場合の作品が『トレンケ・ラウケン』であり、それがめちゃくちゃ面白かったんだよな。ちなみに、本作の中年男性は監督の父親だそうです。雰囲気がある人だった。

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