『蛇の道』公開記念 「黒沢清監督の道」(『地獄の警備員』、『CURE』、『アカルイミライ』)


『地獄の警備員』をみた。

バブル景気で急成長を遂げた総合商社に、絵画取引担当の秋子と警備員の富士丸という2人の新人が入社した。元力士の富士丸は兄弟子とその愛人を殺害したが、精神鑑定の結果無罪となった要注意人物だ。秋子が慣れない仕事に追われる一方で、警備室では目を覆うほどの惨劇が幕を開けていた……。

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怖かった。怖かったけど、怖いものをみるつもりでみたから耐えられた。おわってみればこの夜みた3本のうち一番怖かった気もする。わたしはシンプルな暴力も苦手ではあるのでちょっと目をそらしちゃったところもあります。それにしても、冒頭からしばらくこの映画どうやって怖くなるんだろうな~って余裕かましてたら全然不条理な登場人物の不気味さとパワーで押し切ってくる作品だった。課長がやられる夜のシーンをみて反射的に「怖い!」と思ってからはずっとびびってました。今場面を振り返るとめちゃくちゃなシーンもあるんですが、みてるあいだはそんな余裕なかったですからね。

エンドロールが流れて、その終盤になって突然エンディングテーマがかかる。しかもこの映画の内容でロック風のラブソング流すんだ……ってふふっとなった。そしてそのままエンドロールの終わりにあわせて曲にフェードアウトがかかったのも笑顔になった。

この1本目でだいぶびびっていたんですが、次がよく名前を見る作品『CURE』なんだよな。やばいぜ。

一度ロビーに出ると休憩時間が25分もあることに気づく。特にすることもないので本を読む。館内BGMはハウスでミラーボールも回っている。眠くない。他のお客さんがフードコーナーでナゲットとかを頼んでいるところをみて良いなと思った。わたしも次の映画をみて元気が残っていたら食べよう。


『CURE』をみた。めちゃくちゃおもしろかった……。

娼婦惨殺事件を捜査する刑事の高部は、被害者の胸をX字型に切り裂く手口が密かに続いていることを訝しがる。まったく無関係な複数の犯人が、なぜ特異な手口を共通して使い、それを認識していないのか……。その頃、東京近郊の海岸をひとりの若い男がさまよっていた。記憶障害を持つ男は小学校教師に助けられるが、教師は男の不思議な話術に引き込まれ、魔が差したように妻をXの字に切り裂いて殺害してしまう。間宮と名乗るこの男は、その後も同様の催眠暗示を行い、加害者と被害者を増やしていく。捜査線上に浮上した間宮を高部は容疑者として調べ始めるが、進展のない会話に翻ろうされ、精神を病む妻・文江の介護による疲れも加わり、苛立ちを積もらせていく……。映画.com

これまで何か怖そうで敬遠していたのを反省するくらいよかった。先にみた『地獄の警備員』とくらべて一気に現代感あるよな~って開始数分くらいはへらへらしていたんですが、そこから終わるまでのあいだ、怖さよりも緊張感が強い画面からぜんぜん目が離せなくて、気づいたら終わっていた感じがある。

90年代の終わり、地下鉄サリン事件の2年後の映画だと思うとそういう内容ではあるんですが、何より登場人物が何をするのか、冒頭から最後まで誰も信用できないあの緊張感はすごかったな。登場人物がぎりぎりのところで理性を守ろうとしていることについ感情を乗せてしまうんですが、それ自体が信用できないものであるように終盤は画面が乱れていく。役所広司の演技がまた良いんだよな。とてもよかったです。

エンドロールをぼんやりみてると、音楽のところにゲイリー芦屋氏の名前が出てきて「そうだったんだ!」ってなった。氏はマニュアル・オブ・エラーズのメンバーとしてたまこまーけっとシリーズの音楽をやっている方で、わたしとしては牧場物語3(音楽がめちゃくちゃ良い)も担当されていたので覚えていたお名前です。そのあたりのイメージと音楽的になかなか繋がらないんですが、そういえばゲームのSIRENもやっていたと言われるとなるほどとなる。

休憩時間にロビーへ。数人は外へ出て空気を吸っているのが見える。建物の外は真っ暗で、まだ雨は降っているみたい。27時をすぎて館内BGMは切れて、ミラーボールも止まっている。映画の予告編が流れていて、劇中のボレロが聞こえてくる。2時間前には在庫が無くなりそうだった映画「ルックバック」のちらしが補充されていて、もう翌日の営業に向けて準備が終わったんだなって思った。フードコートはまだやってくれていたので手包みピザを食べる。熱々でおいしいぜ。照り焼きチキンの甘辛さが染みるお夜食です。

席について、そういえば今夜はあの苦手な劇場動画(映画泥棒)を3回見ることになるんだなって思った。前の方の席では休憩時間に座席の隙間で寝ている人がいる。わたしは深夜のテンションでCUREのおもしろさに当てられて少しハイになっている感じがある。


『アカルイミライ』をみた。よかった……。

仁村雄二は、同じおしぼり工場で働く同僚・有田守と公私ともに淡々とした日常を過ごしている。雄二は他人と上手く渡り合えず無鉄砲な性格。そんな彼を見兼ねた守はある日、彼ら2人だけしか分からない2つのサインを提案し、それを徹底させようとする。その頃から雄二は守が飼っている猛毒の“アカクラゲ”に興味を示すようになった。ある時、守はそのクラゲを雄二に託して突然姿を消す。守は工場の社長夫妻殺害の容疑者として収監されていた。以来、雄二は戸惑いながらも、何かに取り憑かれたようにクラゲの世話を始めるのだが…。第七藝術劇場

ここまでの2作品とはまた違う雰囲気。現実を、今を、という作品を、オールナイト上映の最後に、明け方の朦朧とした頭でみているとそうだよな……と普段より染みる。気がする。

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