キノ・ライカ 小さな町の映画館

北欧フィンランドの鉄鋼の町カルッキラ。深い森と湖と、今は使われなくなった鋳物工場しかなかった人口9000人の小さなその町に、はじめての映画館“キノ・ライカ”がまもなく誕生する。元工場の一角で自らの手で釘を打ち、椅子を取りつけ、スクリーンを張るのは映画監督のアキ・カウリスマキと仲間たち。キャデラックにバイク、ビールと音楽。まるでカウリスマキの映画から抜けでたようなその町で、住人たちは映画館への期待に胸をふくらませ、口々に映画について話しだす…。
これは豊かな自然のなかで芸術を愛して暮らす人々の、映画とカルッキラという町への想いをめぐる物語。そこにはカウリスマキの理想の映画館キノ・ライカが町にもたらした変化の兆し、これからの映画館の可能性がとらえられている。公式サイト

カウリスマキの故郷の町に映画館が出来上がるまでの映画。ドキュメンタリーのようなインタビューではなく、街の住人たちの会話が中心のフィクション的な作品になっています。そのなかにカウリスマキ当人もいますが終盤までほとんどセリフはなく、淡々と建設の作業をしている姿が度々画面に映る。住民たちがカウリスマキ作品について、あるいはそこで自分が撮影されたことについて、またはここでの暮らしや映画館ができることについて話をしている姿が自然の風景のなかで静かに描かれるのは、インタビューを通じてそれぞれの思いを語るよりも逆に、逆になのかはちょっと言い方がむずかしいんですが、カルッキラという街に映画館ができることについての生な感じがあった。これは今作の監督が現地に住み込んでカウリスマキとも一緒に地域の人たちと一緒に作業を進めてきたこともあるだろうし、そもそもカウリスマキの作品自体にそういう人々の暮らしを映してきたところがあるからかもしれない。先月行われた、映画館の人が上映予定作品を紹介したりしてくれるイベントでは「カウリスマキ作品にでてくるような人たちがそのまま映っている」といっていたのはそうだった。音楽プレイヤーの再生ボタンを押して、少しもじもじしてから隣の人の方をちらっとみて、またもじもじするところって絶対カウリスマキ作品でみたことあるんだよな(?)。この映画ではジム・ジャームッシュがそれになっていました。

それにやっぱり、映画館ができるということであればわたしがこの映画をみた映画館自体、今年オープンした場所なんだよな。名演小劇場やちくさ正文館が閉められていく中で同じく閉館となったシネマテークの後身として誕生したこの映画館のことちょっと思い出してた。スピーカーを近くのライブハウスの方が調整していたことや、壁が塗り直されてきれいになったことや、混みそうな作品のときは変わらず座椅子席が存在すること。よかったです。

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