キムズビデオ

かつてニューヨークに存在したレンタルビデオショップ、キムズビデオ。この伝説的なショップが閉店してしまったあと、ギリシャのサレーミ市に寄贈された数万本のVHSコレクションをみにいくと雨漏りのある倉庫で埃をかぶった状態になっている! この現状をなんとかするために奔走する作品です。

へんてこムービーだった。上映二日目の映画館はそれほど混み合っておらず、スクリーンのちょっとしたことに笑い声を上げるオールドスタイルのおじさんたちとみれたのかなり良かったかかも。

キムズビデオ自体が無許可のダビングを行いながら活動していたエピソード。(一応)正式な手続きで寄贈されているコレクションを追いかける体で関係者たちを撮りまくるカメラ。さらに不法侵入。「そんな、気持ちはわかるけど現代では無法すぎでは……!?」ともぞもぞしながらみていると突如関わってくるマフィアや汚職事件。そしてついには『映画の声』に導かれて突き進むビデオ奪還作戦。おもしろすぎる。本当か嘘(フィクション)かわからない展開がどんどん登場し、気づけば無法な展開に振り回されるのが楽しくなってきた。

汚職疑惑のある元市長の追跡中にその車両が高架下に止まった夜の場面の不穏な瞬間は投げっぱなしで、コレクションの回収に現地へ向かうとまさに(?!)火事が発生していた場面では”火事の消火と同時に、移送用のコンテナ車が到着した”のひとことだけ。「このタイミングでの火事ってそんな扱いで良いのか!?」と思いながらも、確かにコレクションをニューヨークに取り戻す話なら火事の顛末は別にいいのか……(いいか?)とならざるを得ないこの映画の勢いがある。展開は宙ぶらりんだらけで、弁護士を介したやりとりの数年はあっという間に省略され、そしてこの映画は絶対にたどり着けないと思っていた結末へ。

とてもよかったです。金銭的な、法的な、あるいは持続的な運営といった部分は省略しながら、ひたすら目的に向けて突き進むパワーがあって、それ自体が映画作品になっているのってうれしいかも。

配信が浸透しきった現状でなお物理メディアを残すことにこだわるということにはわたしも思うところがあって、多分もう少し上の世代には郷愁なんかもあるのかもしれないですが、個人的にはその媒体でしか触れられない作品が今でも山ほどあるっていうことに尽きるんだよな。音楽で言えば近年はDiscogsが一つの拠点となり作品情報が集まっているものの、未だに掲載されていない音源はたくさんある(気づいたならわたしが自分で登録しなよという話ではあるが……)し、アーカイブすることだけがすべてではないものの、まずはそこからだという気もする。

ぼくはキムズビデオだ  『キムズビデオ』より

作品内に登場した好きなモノローグです。「映画の声」を聴き、ついに自分をコレクションと一体化した瞬間。(字幕の見間違えだったかも、字幕の位置がやや特殊な映画だった。)

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