『ジョン・クランコ バレエの革命児』をみました。イギリスを追われてやってきたシュツットガルト・バレエ団の芸術監督となり、その後、世界的なカンパニーまで押し上げたジョン・クランコの伝記映画です。
わたしのわずかなバレエ知識、フランス、ロシア、アメリカを中心にした大河のような知識だけけなんだよな。「シュツットガルトの奇跡」や、そこからノイマイヤー、キリアン、フォーサイスへとつながるという流れだけ把握していたんですが、同時代では突出して扱われている印象だけどそれよりも前世代、後世代の印象がさらに強くて結果あまり頭に残っていないところもあったので、今回そのジョン・クランコを軸にした伝記物をみれたのはちょうどよかったかもしれないです。
冒頭から主演であるサム・ライリーの目にカメラ寄って、その憂いのあるというか困ったような目が印象付けられます。その瞳孔にバレエの舞台が投影される演出もある。この演出がこのあとも要所のつなぎとなっていくんですが、最後にはジョン・クランコの幻視するバレエの姿としてプリマにも引き継がれていきます(そのプリマから映画より未来、次世代のノイマイヤーへと繋がっていくことになる)。
とにかくサム・ライリーの目が印象に残る映画で(その大部分で涙を流していて、あとほぼすべての場面でタバコを吸っている)、後半になってやつれた雰囲気が出てきてもそれが様になるというか、目で一貫した説得力を持たせるパワーがあった。
作中にはバレエのシーンも多くあり、それを現役のシュツットガルト・バレエ団が演じ、音楽もシュトゥットガルト州立管弦楽団が担当しています。とはいえバレエ全編を映すというよりもクランコの幻視や振付等の過程を映画的に撮ろうとしている印象だった。
頭に残っているのは『ロミオとジュリエット』のマキューシオの決闘シーンです。画面いっぱいに衣装をつけたダンサーが登場して実際に演技をしながら、それをジョン・クランコが止めたりセリフを言ったりしながら進行するっていう、文字にするとそのままただの稽古場面のようなんですけど、これが本作で繰り返される幻視と稽古が重なった場面のひとつなんだよな。どうしても一本道のストーリーであったりするので映画としての面白さはそれほどなんですが、丁寧な作品でよかった。
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