よかった。1993年12月、宇宙物理学を学び、博士号取得を前にダブリンからアキル島に帰ってきた主人公カシオが家族や友人、島の人々との関係を通じて生きづらさと向き合う話。舞台になった1993年はアイルランドにおいて同性愛が非犯罪化された年らしい。
久しぶりに帰った主人公の変化は家族に受け入れられず、家を離れてたまたま再開した幼馴染やそのバンドメンバーと廃墟での共同生活が始まる。必ずしも主人公自身の性自認や性的指向は明示されないながらも、閉鎖的な地域で寄り添いながら暮らす登場人物たちが少しずつ漏らす感情とそれを描くビジュアルがかなりマッチしており、あっという間に読み終わってしまった。


本作で特徴的なのはそのストーリーの進め方で、マウスカーソルが消しゴムになっていて、冒頭から説明もないままにひたすら日記を消す行為が続きます。当時主人公が書いたらしい日記、そこには他の登場人物たちを紹介したものやちょっとした落書き、それにそのときの気持ちが並んでいるんですが、それをひたすら消していく。日記だけではなくて、その日その時の出来事の映像(画面)も消しゴムで消していく。この後戻りのできなさ(日記というのは既に起こったことが書かれているので当然ではありますが)がずっとプレイ感に染み付いているので、プレイ中はこの作品がどうやって終わるのか少しだけ不安な気持ちもあった。




とはいえ、終盤はこの消しゴムで消す作業が反転する。このシステムがあってこその作品になっているんだよな。選択肢を選ぶという行為が能動的な未来の描き方になるのは(あそこまで根幹ではないにせよ)『The Cosmic Wheel Sisterhood』を少し思い出しました。とてもよかったです。

ちなみに『If found…』の舞台であるアイルランドのアキル島といえば、映画『イニシェリン島の精霊』のモデル地のひとつ(イニシェリン島はこのあたりの島を組み合わせたものらしい)でした。この映画の風景や雰囲気はゲームをプレイしながらも思い出していた。
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