映画館についたのが上映15分くらい前。パンフレットはまだ残っていました。よかった。これにはサントラの7インチがついています。待合室のソファで一息ついて少しだけ本を読む。イヤホンをしていなかったからか、ふとしたときに、扇風機の回る音が聞こえた気がして顔を上げると横で換気扇が大きな音を出して回ってた。外は晴れで、日差しが心地よいです。
続々と入ってくるお客さんの中には予約のない人もいて、パイプ椅子での補助席対応が10枠くらい使われていたみたい。そういえばこの映画館はそのスタイルやっていたなと思い出しながら席につく。
『悪は存在しない』をみました。とても良かった……。
長野県、水挽町(みずびきちょう)。自然が豊かな高原に位置し、東京からも近く、移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいものだ。しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所が政府からの補助金を得て計画したものだったが、森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に町内は動揺し、その余波は巧たちの生活にも及んでいく。公式サイト
冒頭の木立を仰ぎ見る視点から、最後の木立に消える場面まで。監督作でみられる会話劇が気持ち良くて、それは説明会の場や車内の場面で顕著なんですが、今作ではとくに大部分をしめている、都会ではなく自然のなかで行われる言葉少ななやり取りから広がっていく感覚がある。これは先に『GIFT』を体験していることが影響しているのかもしれない。
『GIFT』を体験していたことで大まかなストーリーのイメージは掴めていたものの、改めて今作をみることで登場人物である巧やプレイモード社の二人の存在感が際立った。それは『GIFT』で音楽と映像から受け取っていたものが、(編集も変わり、)セリフがつくことによって一つの設定に固定化されたというよりも、ありうる中の一つが映画としてまとまったというくらいの感じに思える。それくらい画面や展開に余白がある作品だし、それに耐えうるあまりにきれいな自然の画面だった。日没の町内放送が流れる場面の林ごしの夕日とまきの煙なんだよな。
特装版のパンフレットには「EDNE MIX1」「EDNE MIX2」とされる石橋英子氏による音楽が収録された7インチがついています。劇中からとられたのか、あるいは別の音源かは不明ですが、ここで演奏される音楽のなかには鳥の鳴き声や薪割りの音、ささやき声や足音が収録されていて、(場合によっては薪割りの音とその主の漏らす声だけで、楽器の音が消える部分もある、)監督が二卵性双生児と表現している『悪は存在しない』と『GIFT』の周り(と言って良いのか)にあるようなものが収められている、気がする。このレコードを日記を書きながら、机の左側にあるプレイヤーに手を伸ばして何度も再生をしています。
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