イエス様 マリア様 ヨセフ様(Ee.Ma.Yau)

 

アマゾンプライムで配信がはじまった、『イエス様 マリア様 ヨセフ様(Ee.Ma.Yau)』をみた。『ジャッリカットゥ 牛の怒り』の監督作です。よかったです。

インドの漁村で深夜に老人が亡くなる。一家は騒然、すぐに村中に話がまわり、息子は頼れる隣人とともに葬儀に向けて調整に駆け回る。不在にしがちな父がいつも酔うと話していた豪勢な葬儀を、ついに今、出してやらなきゃという思いが息子にはある。

死亡確認をするために医師を呼びにいくもうまく話がつかず、代わりに来た看護師とも話がすれ違い、妻の装飾品を担保に買った黒檀の棺は底が抜け、楽団の演奏は下手くそで、神父とも諍いがおこり、警察官も登場するし、会場は騒然。そこに嵐がやってくる。さらに別の島に住んでいる父のもう一つの家族(別の妻、息子、親族達)も登場して状況は混沌を極めていく。何をやってもうまくいかず、全てがすれ違い、行き詰まる。埋葬ができない。

序盤から場面に登場するあらゆる情報が混乱の起爆剤であったかのように老人の亡くなった夜に爆発するんだよな。老人が礼拝にいかないことを神父が快く思っていなかったことや、息子と噂好きの男の間に金銭のトラブルが合ったこと。そういう一つ一つがすべて、しっちゃかめっちゃかな状況を生んでいく……。

信仰心を描くというよりも、個人の思いがどのように人に伝播していくか、そのとき人は? というところが、監督の作品でめちゃくちゃおもしろかった『ジャッリカットゥ 牛の怒り』にも通じる気がします。それにどちらも夜の場面で蠢く光(篝火や電気)の使い方がすごくうまい。

まあこちらは予告編にあるとおり、”暴走牛vs1000人の狂人!!”みたいなテンションですが……。そしてジャッリカットウのほうはすべての人が冷静さを失って個が消滅している分、より生でエンタメであるところはあります。『イエス様 マリア様 ヨセフ様(Ee.Ma.Yau)』はそこが一人の息子に集中してしまうんだよな。

いずれの作品も画面のキレの良さもあるし、なによりただの日常の襞であるものが徐々に徐々に人の手を離れてコントロール不能になっていく、ある種の快感というかブラックユーモア(というのは不誠実かも知れませんが)がある。よかったです。

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