DON’T BREAK DOWN – A FILM ABOUT JAWBREAKER

 

1986年~1996年まで活動、ニューヨーク出身のバンド、ジョウブレイカーの軌跡を追ったドキュメンタリー映画。90年代に拠点をサンフランシスコに移し、インディーズバンドとして絶大な支持を集めるも、1995年、メジャーレーベルのGeffenからアルバムを発表、凄まじいバッシングを受けて翌年解散、この顛末がすべて描かれている。監督・プロデューサーは『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』(2005年)のチーム、ティム・アーウィン&キース・スキエロン。http://underdocs.jp/

 

わたしはJawbreakerがめちゃくちゃ好きなんですよね。でも触れたのは完全に後追いで、音源以外の情報を積極的に追ったりもしていなかったのでメンバーの名前くらいしか知らなかったりする。そのまま初めて触れてから10年くらいたった今、このドキュメンタリーが上映されることを知りました。メンバーや関係者のインタビュー、ライブ映像を元にバンドの歴史を映像にまとめたものです。

これはJawbreakerに限らずですが、これまで正直にいってバンドそれ自体にそれほど関心がなかったというか、(良いか悪いかは別にして)音楽は一人でヘッドホンをして聴いてばかりでその先にあるバンドに対する意識が低いままここまで来ちゃったところがあるので、当時の現地シーンでどのように受容されてたのか、Jawbreakerについてもその後のバッシングも話には読んだことあるものの、例えばそのときに書かれた曲の歌詞だとか、そういうところで自分が好きでずっと聴いてきた音楽に違う色がついちゃったらいやだなって気持ちもちょっとありました。

 

その上でみたんですが、いやーめちゃくちゃ良かったですね。終盤『よくやったよな、バンドを組んでたんだ。』って言葉があるんですが、当たり前なんだけどバンド活動があって音源があるというか、いや本当に当然にそういうことあるってわかるんだけどわからないじゃないですか(?)。10数年ぶりに再開したメンバーが割と強めに気まずそうに談笑してるところとか、当時を知ってる関係者のエピソードだとか、そういうのが自分の好きな音楽に色がついちゃうんじゃなくて、こう土台と言うかそういう元があって当然音楽が生まれてるんですけどそれはそれ、これはこれって自分の中でおもったよりも割としっかり線引ができて、その上でJawbreakerに対する愛着が強くなるような感覚が今あります。

 

面白かったシーンもいくつかありました。他の関係者とは少し立ち位置が違うGreen Dayのビリー・ジョーもインタビューに多く登場していて、近いシーンから出てメジャーデビューもしてる彼が、Jawbreakerのメジャー転向の噂が広がる中ライブ会場で聴いた『メジャー非転向宣言』(この数週間後にメジャー行き)を振りかえって、「おい、この中(ライブハウス)でメジャーと契約してるの俺だけだぜ」「あの発言はよくないよ(未来は誰にもわからないから)」って笑ってるの、めちゃくちゃ好き。

わたしが思ってた「私だけの音楽」としての接し方と、劇中でバッシングをかましまくってる「私達の音楽」って接し方がどうしてもまあ近いところがあり思ったところも少しあって、バンド(あるいはアーティスト)と観客(ファン)の関係で後者が求める姿とのギャップ、求めることを含めた両者の関係って、わたしのあまり詳しくないところですが例えばアイドルとかの話題でもたまに見ることがあって、特に最近はそれでもバンド(あるいはアーティスト)ありきでしょっていうのが理性的と言うかまあ当然そうだよねっていう雰囲気がありすごくわかる。すごくわかるんですが、当事者になるとどうしても自分の思いって大事にしたいし難しい。メジャー後のアルバムが不評で云々の話があったあとに、数年後には世間的な再評価、インタビューを受けた人たちも今では気に入ってるって語っていたり、映画の最後に流れるのは様々なカバー演奏のJawbreaker楽曲なんだよな。結局その瞬間の感情との折り合いも自分の中の層の一つで、その上と下に積み重ねていくもので好きなバンドやアーティストとの(自分から相手への矢印という意味で)関係ができてくるというか。相手に対する思いと、相手と自分との関係(同じく自分から相手への矢印という意味で)は別で、推し概念は前者と思われがちだけど後者な気がするんですよね。自分の個人としての積み重ねと、相手の積み重ねの間にイメージや作品があってっていう。

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