録音について聞かれたジョニーの「平凡なものを不滅にできる」「しかも楽しい」ってところ、ここに尽きるんだよな。二人が一緒に過ごした時間も、ジェシーが両親と過ごした時間も、あるいは本編に何度も挿入されるインタビューにおける若者、子どもたちの受け答えもそう。あの受け答え自体いわゆるハッとさせられるタイプのものだったりあるいはすごくパーソナルで、いずれにせよだからこそ凡庸に聴こえるものだったりもするんですが、全部ひっくるめて誰かとのやりとりのなかで生まれて記録、記憶に残っていくものとして肯定されるような映画で特に終盤は涙がでてしまった。
わたしは子どもとのインタビューを使って何かを語ることは、特に映画なんかで作品のメッセージを伝えるような位置づけだったりすると渋い気持ちになってしまうことも多いんですが、本作はそのあたり意識的で、最後のエンドロールでは映像なしで切り貼りされたインタビュー音声だけを流すなんてやったりもしました。
それに過去の回想の並べ方がうまいんだよな。ジョニーとジェシー、ヴィヴとポール、ジェシーとヴィヴ、ジェシーとポール、時間を行き来する中でみえてくるのが決して現在それぞれが直面している困難の来歴を浮かび上がらせるものではなくて、その時々に確かにあった時間を並列しているというか、過去にあったことを事実として今があるっていうそれだけなんだよな。過去が変えられないという話じゃなくて過去もあって現在もあるというか……何言ってるかわからなくなってきたんですが、そういう話です。
個人的にはヴィブがMinutemen(とてもナイスなバンドです)のシャツを着用しているシーンにちょっとだけひきこまれたところもあります。冒頭から描かれてきたヴィヴ像、介護、夫の支援、子育てをひとりで背負い込んで溺れそうだった姿とは違うところがここで一瞬だけみえた気がします。該当シーンは夫(楽器奏者)をイメージさせるオペラを部屋で大音量で流しながらジェシーと二人で身体を振り回して大はしゃぎするっていうもので、ヴィヴのヴィヴ自身の趣味というか、ひとつのルーツというか、そういうところがみえた気がする(わたしのかなり独りよがりな見方な気もします)。
この映画はそういう個人それぞれがお互いに話をしていくっていうだけなんですが、そのやりとりをめちゃくちゃ肯定的に描いてくれるからかなりぐっときてしまう作品でした。
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