クローズ・アップ

キアロスタミ作品は初めてです。全国24館のミニシアター同時上映で、終了後にトークショーのライブビューイングもあるイベントでした。

失業者のサブジアンはバスで隣り合わせた裕福そうな婦人から読んでいた本について聞かれ、なりゆきから自分が著者で映画監督のマフマルバフだとつい偽ってしまう。婦人の家に招かれた彼は、映画の話を情熱的に語るうちに、架空の映画製作の話にこの家族を巻き込み…。映画監督だと身分を偽り、詐欺で逮捕された青年の実話をもとに、再現映像とドキュメンタリーを交差させて描いた異色作。 https://arthouse-guide.jp/

この再現映像とドキュメンタリーの交差のところだけ頭にいれてたんですが、実際の事件を、実際の映像と合わせて、再現部分も実際の事件の関係者(被告、被害者家族、監督等)が演じるっていう建付けであってもう冒頭からどこが再現でどこが実際の映像なのかわからないんだよな。いや、カットバックとかでわかったりはするんですが演技の質感が前面に出ていて圧倒されてしまう。

自分を映画監督だと偽った男の裁判のなかで、その男が多くの人にとって無関心な自分の苦しい境遇、あるいは映画監督して振る舞うことで周りからの尊敬を得られたことを述べて、ここから演じるということ、映画監督としての権力めいたことにまで触れるシーンがあるんですが(というか実際の裁判映像だそうですが、そうだとしてこんなやりとりが撮られることある?)、このメタなやりとりが映画の出演者としてこの男自体を救いだしながら、一方で反面の映画を撮ること自体の(言ってみれば)暴力性みたいなことまで描いていてうおおとなりました。いや、端的にラストシーンが良すぎるのもある。おもしろいというかすごい……となってしまう作品でした。ちょうど年明け早々にキアロスタミ特集上映があるので忘れずに行きたいです。

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