『あらゆることは今起こる』(柴崎友香)を読み終わった。
あらゆることとは人間にとって、まさしく、まさしく今起こるのだ、と考えた。数十世紀の時間があろうと、事件が起こるのは現在だけである。空に、陸に、海に、無数の人間の時間があふれているけれども、現実に起こることはいっさい、このわたしの身に起こるのだ……。
『あらゆることは今起こる』227頁(『タブッキをめぐる九つの断章』のなかのボルヘスが『伝奇集』のなかで引用した「八岐の園」からの引用箇所)
発達障害の診断を受けてから日々のことで感じる困難や出来事、考え方が書かれたエッセイです。わたしの実感と近いエピソードがあるたびにそうだよな~って付箋を貼るような読み方をしてしまったからか引き込まれているような感覚があった。
知識や感覚としては知っていても、実際に診断を受けたその瞬間を境に変わる感覚はあるというのもわかる。この本で書かれている話題はその筆者自身の感じる困難を、身近な話題として困っていることとして書いてくれることでちょっとだけわたしもちゃんと考えたほうがよいのかなって気になっているところあった。
「落ちそうで怖い」「落ちたらどうしよう」ではなく、「柵を乗り越えて飛び降りることが簡単にできる」「飛び降りる自分を止められない」が頭に浮かんでしまい、少しでも動いたら「柵を乗り越えて飛び降りる」を実行しそうで、その場でまったく動けなくなったのだった。
『あらゆることは今起こる』102頁
これは本全体の要旨からみると枝葉の部分だけど、めちゃくちゃ身に覚えがあるので付箋を付けたエピソードです。労働に向かう地下鉄のエスカレーターで後ろに体重がずれそうになったりとか、駅のホームとか。
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