夜明けのすべて

月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さんはある日、同僚・山添君のとある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気がなさそうに見えていた山添君もまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいもやりがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも同僚でもないけれど、どこか同士のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。 『夜明けのすべて』パンフレット

なにから書いていいかわからないな。主人公たちや栗田金属、そして街をつつむ光がすごくきれいに映されていて、終盤は何気ないシーンでも涙が出てきたし、というかずっと涙止まらなかったです。休日の夜、職場にいる二人が暖をとりながら、自分と相手の症状について冗談交じりに話をするところをみて、この関係が存在しうることを描かれている。

プラネタリウムの解説をする場面の最後、会社の過去の先輩が残したメモを朗読する場面があります。

「夜についてのメモ」
夜明け前がいちばん暗い。
これはイギリスのことわざだが、人間は古来から夜明けに希望を感じる生き物のようだ。
たしかに、朝が存在しなければ、あらゆる生命は誕生しなかっただろう。
しかし、夜が存在しなければ、地球の外の世界に気づくこともできなかっただろう。
夜がやってくるから、私たちは、闇の向こうの途方もない広がりを想像することができる。
私はしばしば、このままずっと夜が続いてほしい、永遠に夜空を眺めていたいと思う。
暗闇と静寂が私をこの世界に繋ぎ止めている。
どこか別の街で暮らす誰かは、眠れぬ夜を過ごし、朝が来るのを待ちわびているかもしれない。
しかし、そんな人間たちの感情とは無関係に、この世界は動いている。
(……) 『夜明けのすべて』パンフレット

これは夜明けのすべてであり、あるいはすべての長い夜についての映画なんだよな。あらすじの”自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。”のところ、相手を思いやり、押し付けにならないように助け合おうとすることがあまりにきれいで、こんな映画があって本当に良かったと思いました。

映画自体の感想とは関係のない、個人的な記憶のメモとして細かい場面でいくと劇中で出てくる、わたしが初めて処方された薬のひとつと眠気、わたしのカバンにいつも入っているもの。あの初めて服用した日の朝の、膝の抜ける感じや強い眠気。あとは山添君の部屋にある家具の一つが、今わたしの部屋にあるものと同じだったのに気づいたときはふふっとなってしまった。

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